HOME > 法律コラム > GoogleやAppleのように法人税が低いからという理由で海外拠点を作るのは安易な考え方ですよ!
GoogleやAppleの節税が最近問題になっていますが、近年は国境を超えた節税が大きな注目を集めています。
税のルールは国ごとに異なりますから、国が変われば税率や計算方法も変わります。
この点、大きな問題となっているのは、税率が極めて低い国である「タックス・ヘイブン」の存在です。
税率が極めて低い、というところから、タックス・ヘイブンを「税金天国」と理解される方も多いですが、正確にはタックス・ヘイブンとは「租税回避地」と訳されます。
ヘイブンとはhaven(避難所)であり、heaven(天国)とは異なります。本国では高い税金を払わざるを得ない富裕層が税金を逃れるために避難する場所、という意味なのです。
租税回避地、と聞くとあまりいい印象はありませんが、タックス・ヘイブンは租税回避や犯罪を奨励するような、得体のしれない国だけを実は意味するわけではありません。
グーグルやアップルの節税で活用されたアイルランドはもちろん、日本人にもなじみの大きなところだと、近年移住も多いと言われるシンガポールも、タックス・ヘイブンに該当することになっています。
日本の制度上、タックス・ヘイブンを「法人実効税率が20%以下の国」としています。シンガポールの法人実効税率は17%(2014年4月現在)ですので、この基準に該当することになります。
実効税率で判断する、というのが面白いところで、実はこの基準となる税率(「トリガー税率」といいます)は、日本以外の国も大いに参考にしています。日本の制度上、タックス・ヘイブンに該当する国に日本企業が投資をすると、「タックス・ヘイブン税制」と言われる特殊な制度が適用される可能性があり、場合によっては税負担が大きくなることもあるからです。
言うまでもなく、「タックス・ヘイブン税制」が適用されてまで、その国に投資をしたくはないと企業は考えますから、日本企業から投資してほしい国は、敢えてトリガー税率を上回るように、自国の実行税率を設定することがあるのです。
一例を申しますと、トリガー税率は以前25%だったのですが、その当時オランダの実効税率は25.5%でした。オランダに拠点を移す日本企業が多い、と言われますが、このような事情を反映したものであることは間違いないと考えられています。
タックス・ヘイブンを使った節税を防止しようと、タックス・ヘイブン税制といった特殊な制度を日本は導入していますが、オランダの例のように、それを逆手にとることが税の世界では頻繁に起こっています。
規制しようとする者とそれを逃れようとする者。このイタチごっこが、グローバル時代の税の現実なのです。