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税務調査で調査官から変なお願いをされたらどう対応すべきか元国税が解説

私の現職時代とは異なり、近年は税務署の調査官の方も非常に礼儀正しくなったと言われています。しかしながら、先日受けた税務調査のセミナーによると以下のようなお願いをしてくる調査官がいるようです。

・税務調査で調査官が使うため、パソコンを用意してほしい
・税務調査の際必要になるので、調査官のロッカーを用意してほしい

税務調査は必要最低限の協力でいい

国家権力を背景にした公務員からこのような「お願い」をされると、多くの納税者はそれを義務と勘違いして、「お願い」に従わないと大変なことになると考えがちです。しかし、このような「お願い」に従う必要は当然のことながらありません。

税務調査は納税者の申告が正しいのか、確認するために行われるもので、強権的なことは原則としてできないことになっています。実際のところ、国税の内規でも納税者の方に負担にならないよう、きちんと許可を取りながら調査を進めるよう指示されています。

このため、申告の確認に必要な事項については協力しなければなりませんが、ロッカーがあろうとなかろうと、帳簿などを確認すれば申告内容はわかりますし、パソコンが必要なら税務署から持参すればいいだけで、実際のところパソコンを持参する調査官もたくさんいますから、このような協力をする必要はないのです。

申告書の控えを用意するというお願いは?

ところで、近年の税務調査では「提出した申告書の控えをご用意ください」という滑稽なお願いが国税からなされています。私の現職時代は、提出を受けた申告書を外部に持ち出すことができたのですが、酒に酔って持ち出した申告書を紛失するという不祥事が後を絶たないため、国税は一切申告書の持ち出しを禁止したようです。

こういう訳で、調査したくても申告書の確認が調査先でできませんので、調査先に申告書の控えを用意して、などという訳ですが、これについても協力する必要は法律的にはないと考えられます。申告書の提出はすでにしていますし、何より申告書の控えを納税者が保存しなければならないという法律はないからです。

何より、国税が調査したい脱税などをする納税者の場合、調査官に税務調査で提示する申告書の控えと、税務署に過去提出した申告書と一致している保証はないはずです。となると、税務調査の充実という観点からも、このような国税の対応は大いに疑問があります。

専門家プロフィール

元国税調査官の税理士 松嶋洋
東京大学を卒業後、国民生活金融公庫を経て東京国税局に入局。国税調査官として、法人税調査・審理事務を担当。現在は118ページにも及ぶ税務調査対策術を無料で公開し、税理士を対象としたコンサルティング業を展開。

※注意事項:記載については、著者の個人的見解であり正確性を保証するものではありません。本コラムのご利用によって生じたいかなる損害に対しても、著者は賠償責任を負いません。加えて、今後の税制改正等により、内容の全部または一部の見直しがありうる点にご注意ください。

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