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タックスヘイブン税制改正で節税効果が見込めなくなったキャプティブ

海外子会社を使った節税として、よく見られることの一つに、キャプティブがあります。キャプティブとは、保険子会社を意味します。災害など、企業のリスクをヘッジするために損害保険を保険会社と契約する企業は多いですが、キャプティブを活用する場合、海外にその保険会社と契約した企業(親会社)が、再保険会社である子会社を設立します。

先の保険会社は、この再保険会社(子会社)に親会社がかけた保険を再保険します。その上で、子会社は再保険をまた海外の保険会社に再々保険します。このようにすることで、企業のリスクを分散させながら、子会社に再保険料と再々保険料の差額の利益を留保させることができます。

すなわち、リスクの一部は自社グループに残るものの、保険料の一部をグループ会社に残すことができるのがキャプティブなのです。

キャプティブのメリット

キャプティブが節税になるのは、その子会社が設立される国がタックスヘイブンなどの低課税国であることがほとんどだからです。すなわち、留保される利益について、子会社の本国では課税は低く済みます。

ところで、タックスヘイブンに子会社を作るなどすれば、日本でその子会社の留保利益に課税することができるという制度があります(タックスヘイブン税制)。ただし、このタックスヘイブン税制は、タックスヘイブンの子会社に実態があるとして一定の要件を満たしていれば、適用から除かれる仕組みとなっています。ここを活用し、キャプティブの子会社についてタックスヘイブン税制の対象にならないように、スキームを組成していました。

タックスヘイブン税制の改正

しかし、去る平成31年度税制改正で、キャプティブの子会社等の取扱いについて改正されています。具体的には、キャプティブの子会社については、事業実態などがあったとしても、原則タックスヘイブン税制の対象になることとされました。

具体的には、グループ会社など、所定の関連者以外の者からの保険料収入が極端に少なかったり、関連者などからの保険料収入について、それに対応する関連者以外の者に対する再保険料が小さかったりするような保険子会社については、原則タックスヘイブン税制の対象になります。

このため、キャプティブについては、今後原則として節税の効果は見込められませんので注意してください。

専門家プロフィール

元国税調査官の税理士 松嶋洋
東京大学を卒業後、国民生活金融公庫を経て東京国税局に入局。国税調査官として、法人税調査・審理事務を担当。現在は118ページにも及ぶ税務調査対策術を無料で公開し、税理士を対象としたコンサルティング業を展開。

※注意事項:記載については、著者の個人的見解であり正確性を保証するものではありません。本コラムのご利用によって生じたいかなる損害に対しても、著者は賠償責任を負いません。加えて、今後の税制改正等により、内容の全部または一部の見直しがありうる点にご注意ください。

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