HOME > 法律コラム > 不動産所得において修繕積立金が経費になるかどうかを税理士が解説
区分マンションに係る不動産所得の申告において、経費になるか問題になる支出の一つに、修繕積立金があります。修繕積立金は、マンションの共有部分に、将来発生すると予想される大規模修繕に備えて、積立が要請されるものです。
ここで問題になるのは、修繕などのサービスに関する経費は、サービスを受けたタイミングで経費になるという大原則があるということです。すなわち、実際に修繕などが実行されない限り、修繕費は経費になりません。
修繕積立金は、あくまでも将来の修繕に備えるものですので、修繕が行われるまで経費にならないというのが大原則なのです。
しかしながら、修繕積立金はキャッシュアウトが義務付けられる費用であり、かつその費用はマンション管理組合が管理しますので返金なども難しいものです。このような支出が経費にならないのは酷なので、国税は特別な取扱いを認めています。
具体的には、以下の要件を満たす修繕積立金については、その支払期日の属する年分の必要経費に算入しても問題ないとされます。
1 修繕積立金の支払が、マンション標準管理規約に沿った適正な管理規約に従ってなされるものであること
2 区分所有者である賃貸人は、管理組合に対して、修繕積立金の支払義務を負うことになること
3 管理組合は、支払を受けた修繕積立金について、区分所有者に対して返還する義務を負わないこと
4 修繕積立金は、将来の修繕等のためにのみ使用され、他へ流用されるものでないこと
5 修繕積立金の額は、長期修繕計画に基づき各区分所有者の共有持分に応じて、合理的な方法により算出されていること
このため、これらの要件に合致するかどうかを判断し、合致すれば経費として申告できます。
上記の要件に合致しない修繕積立金は、支払期日ではなく実際の修繕のタイミングで経費になると考えられますが、ここで問題になるのは、区分所有して賃貸しているマンションを売却した時の取扱いです。売却時、この修繕積立金についても買主と精算することがありますが、その時の課税関係がよく分かりません。
実際の修繕はないものの、もはや物件を売却することになりますから、そのタイミングで経費になると考えられますが、明確な事例がないため困ります。申告に当たっては、税理士や税務署に相談しながら、慎重に対応するべきと考えます。
元国税調査官の税理士 松嶋洋
東京大学を卒業後、国民生活金融公庫を経て東京国税局に入局。国税調査官として、法人税調査・審理事務を担当。現在は118ページにも及ぶ税務調査対策術を無料で公開し、税理士を対象としたコンサルティング業を展開。
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