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個人事業廃業時の事業税について認められている二つの特例を解説

個人事業主に課税される事業税は、所得税や個人住民税とは異なり、所得税の必要経費として認められます。ただし、必要経費になるタイミングは来年になりますので注意が必要です。事業税は、当年の事業所得などをベースに、来年賦課決定されて納税を求められるわけですが、税金はその決定のタイミングで経費になるのが原則ですので、1年待つ必要があります。

廃業の場合はどうなる?

ここで問題になるのは、廃業の場合の取扱いです。個人事業を廃業すると、廃業した年度で所得税を申告しますが、その所得に対して課税される事業税は来年納付することになります。その来年は、すでに廃業していますから事業所得などはありません。となれば、事業税は課税されるものの、経費になる余地はない、といった状況になります。

この点を踏まえ、事業税の見込控除と、事業廃止の場合の必要経費の特例という、二つの特例が設けられています。

事業税の見込控除とは

見込控除とは、文字通り廃業年分の所得税において、来年に課税される事業税の見込金額を経費にするという特例です。この見込額は、以下の算式で計算します。

(A±B)×C ÷ (1+C)

A・・・事業税の課税見込額を控除する前の廃業年分の事業所得等の金額
B・・・事業税の税計算上、Aの金額に加算し又は減算する金額
C・・・事業税の税率

なお、上記Bの加算し又は減算する金額ですが、原則として以下です。

加算・・・所得税で認められる青色申告特別控除額
減算・・・事業税で認められる事業主控除額290万円(月数按分)

事業廃止の場合の必要経費の特例

事業廃止の場合の必要経費の特例とは、事業廃止後に発生した一定の事業の経費を、廃業年分の必要経費に後日加えることができるという特例です。この特例は、廃業後の経費を遡って廃業年の所得税の計算に加える必要があるため、更正の請求という手続きが必要になります。

更正の請求の手続きは煩雑ですし、これをすると国税がチェックをして場合によっては税務調査も行われますから、できることなら簡易な事業税の見込控除が有効と思われます。

法人成りも廃業

注意したいのは、法人成りも廃業として取り扱われるということです。法人なりは個人の事業をやめて法人でやることだからです。

事業を継続すれば、いずれは必ず法人成りする必要が出てきますので、その際事業税の手続きも忘れず処理する必要があります。

専門家プロフィール

元国税調査官の税理士 松嶋洋
東京大学を卒業後、国民生活金融公庫を経て東京国税局に入局。国税調査官として、法人税調査・審理事務を担当。現在は118ページにも及ぶ税務調査対策術を無料で公開し、税理士を対象としたコンサルティング業を展開。

※注意事項:記載については、著者の個人的見解であり正確性を保証するものではありません。本コラムのご利用によって生じたいかなる損害に対しても、著者は賠償責任を負いません。加えて、今後の税制改正等により、内容の全部または一部の見直しがありうる点にご注意ください。

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