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不審者を撃退したのに、何故か不審者から訴えられた!過剰防衛に気をつけないと一転犯罪者に?!

夜道や人通りが少ないところを歩くときには何度か振り返るだけでも、変質者から襲われる確率を減らすと言われています。その他にも不審者を携帯で撮影することも効果的です。(あからさまであると、トラブルの原因になりますので自然体で、景色をとるような雰囲気を保つことが重要です。)

しかしそれでも襲われてしまうことは有ります。

変質者に狙われやすい女性は「露出が高い衣服」であることが共通していますが、対象は女性だけではなく、子供も含まれます。

ひとり暮らしの方や、小さいお子さんがいらっしゃる親は防犯対策をしている方も少なくないと思いますが、今回はそんな防犯グッズを扱う際の「過剰防衛の注意事項」について森谷和馬弁護士に話を聞いてみました。

正当防衛であることを満たす要件はあるのでしょうか?

正当防衛は、「害悪を及ぼそうとする者に対する反撃を認めることは正義に適う」という社会一般の思想・感情に基づいていると考えられます。

刑法36条1項はその要件・効果として、「急迫不正の侵害に対して、自己または他人の権利を防衛するため、やむを得ずにした行為は、罰しない」と定めています。

(1)「急迫不正の侵害」とは、自分や他人の生命・身体・財産に対する危険な行為や状態が現に起きていること或いは今すぐに起きそうなことを言います。「不正」とは違法性のあることを言い、犯罪行為に限られません。

(2) 「やむを得ずにした行為」とは、危険を避けるための行為(防衛行為)ですが、その行為が必要(他に危険を回避する手立てがないこと)でありかつ妥当(行き過ぎでないこと)であることが必要です。

このような要件を満たした場合には、たとえその防衛行為によって相手に何らかの被害を与えた(例えば相手が怪我をした)としても、「罰しない」つまり、犯罪として起訴されることがないという結果となります。

過剰防衛はどんな罰を受けるのでしょうか?

刑法36条2項は「過剰防衛」について「防衛の程度を超えた行為は、情状により、その刑を減軽し、又は免除することができる」と定めています。

つまり、先の回答で示した要件のうち、防衛行為が妥当な範囲を超えてしまった(必要以上に相手にダメージを与えた)場合を指します。

この場合には刑事責任を問われますが、緊急事態であり、冷静な判断も難しいだろうということで、たとえ有罪でも軽い刑になったり、刑自体が免除される可能性があります。

過剰防衛にならないように気をつけておくべきことはありますか?

女性が不審な男に路上でいきなり抱きつかれたら、それは強制わいせつ罪に当たりますから、「急迫不正の侵害」と言えるでしょう。従って、その不審者を撃退することは正当防衛に当たりそうです。

その女性は「防犯グッズ」で撃退したということですが、どんな防犯グッズなのでしょうか。

相手に対するダメージが極めて大きいときには「過剰防衛」となる可能性があります。市販の防犯グッズにはその点の配慮(相手へのダメージが過剰にならない)がされていると思いますが、極端な例として、抱きついてきた相手が防犯グッズの使用で死んでしまうような場合には、明らかに過剰防衛です。

このように、相手による「侵害」の強さと防衛行為の強さは、ほぼ見合ったものでなくてはなりません。例えば、ひったくりをしようとする相手とナイフで襲いかかってくる相手とでは、必要な防衛行為の内容や程度は違ってくるでしょう。後者の方が明らかに深刻であり、それに対する防衛行為も強めになって当然です。

取材協力弁護士  森谷和馬 事務所HP
千葉県弁護士会所属。1976年に弁護士登録した当初から現在に至るまで、医療過誤・医療事故を患者側で手がけています。またその他に離婚問題や遺言、相続、遺産分割なども幅広く対応。

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