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居住用賃貸建物に係る控除対象外消費税額について税理士が解説

令和2年度の税制改正により、不動産投資家が購入する居住用賃貸マンションなどの「居住用賃貸建物」について、一定の場合を除き、その取得の際に発生する消費税の控除が原則として認められないこととました。このため、居住用物件を購入しても、従来とは異なり消費税の還付が受けられないこととされています。

なお、例外として、購入した居住用賃貸建物を外部に売却したり、居住用からテナント用に転用したりした場合には、居住用賃貸建物の消費税の一部について消費税の控除が認められます(調整計算)。

控除対象外消費税とは

ところで、消費税の控除ができないといった場合、法人税では新しい問題が生じます。それは、控除対象外消費税という問題です。

控除対象外消費税は、文字通り消費税の計算上控除できない消費税を言います。法人税において消費税と本体価格を分けて経理する税抜経理方式を採用した場合、この控除できない消費税については、原則として雑損失などとして処理することになります。しかし、一定の場合には、その経費性が制限されるとされており、場合によっては5年に分けて償却する必要があるともされています。

なお、この一定の場合とは、以下のいずれかの場合以外の場合を意味します。

・ その事業年度の課税売上割合が80%以上であること。
・ 棚卸資産について発生する消費税であること。
・ 一の資産に係る控除対象外消費税額が20万円未満であること。

居住用賃貸建物はどうなるか?

居住用賃貸建物の消費税は、上記の通り原則として消費税の控除対象にはなりません。加えて、高額な建物について発生するのでその金額は20万円を超えることが通例ですし、詳細は割愛しますが、居住用賃貸建物を購入する事業者は、課税売上割合が低い場合がほとんどです。結果として、不動産投資家が居住用賃貸建物の投資をした場合には、上記の控除対象外消費税に該当し、法人税の経費も制限される場合がほとんどなのです。

なお、上記の調整計算を行う場合、すなわち外部売却するような場合には、繰り延べている控除対象外消費税について、そのタイミングで経費として認められる模様です。この処理も失念しないように、注意が必要です。

専門家プロフィール

元国税調査官の税理士 松嶋洋
東京大学を卒業後、国民生活金融公庫を経て東京国税局に入局。国税調査官として、法人税調査・審理事務を担当。現在は118ページにも及ぶ税務調査対策術を無料で公開し、税理士を対象としたコンサルティング業を展開。

※注意事項:記載については、著者の個人的見解であり正確性を保証するものではありません。本コラムのご利用によって生じたいかなる損害に対しても、著者は賠償責任を負いません。加えて、今後の税制改正等により、内容の全部または一部の見直しがありうる点にご注意ください。

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