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税抜と税込はどう違う?税務上で有利不利はあるの?元国税が解説!

会社や個人事業主の経理上、消費税の処理としては税抜経理方式と税込経理方式の2つの処理方法があります。前者は消費税と本体価格を区別する方法で、後者は区別しない方法です。具体例を挙げると、以下の通りです。

110円(税抜100円)の商品を売った場合

1 税抜経理方式

① 売上時
現金 110円 /売上 100円 
        /仮受消費税10円
② 納税時
仮受消費税 10円 /現金 10円

2 税込経理方式

① 売上時
現金110円 /売上110円
② 納税時
租税公課 10円 /現金 10円

ご覧いただくと分かりますが、最終的な利益はどちらの経理方式でも100円(税込経理方式は110円-10円で計算されます)と、原則として同じ金額になります。

この税抜経理方式と税込経理方式は、原則として納税者の選択でどちらを選んで行うことができるとされています。

有利不利が生じる場合もある

先に、どちらの方式を使っても利益は同じと解説しましたが、厳密には税務上有利不利が発生する場合があります。典型例は、税務上の金額基準です。

税務上、10万円未満の固定資産や、30万円未満の固定資産のうち、特例として年300万円までのものは、消耗品として一括で即時償却することが出来たり、中小企業の交際費については、年800万円までは経費になったりと、一定の金額基準が設けられる優遇措置があります。この金額基準について、税込経理方式の場合は税込金額で判断することとし、税抜経理方式の場合は税抜金額で判断することとされています。このため、例えば10万円程度の固定資産を買うような場合には、税抜経理方式の方が有利になる可能性があります。

その他、税抜経理方式は取引ごとに消費税を区分する経理が必要ですから、税込経理方式よりも処理が大変になります。

選択の期限

このため、任意に選択できるといっても、上記のような有利不利も考えておく必要があります。ここで注意したいのは、事後的に選択を変えることができないということです。

例えば、税込経理方式で申告をした後、税抜経理方式の方が有利になると分かったため、税抜経理方式で計算をやり直して、有利になった分の税金を返してほしいと思ったとします。しかし、この場合の還付請求は認められません。いったん申告したため、計算方法を変えることができないからです。

結果として、遅くとも申告期限までにどちらの方式を選択するか決める必要があります。なお、この取扱いは所得税も法人税も同様ですので、注意してください。

専門家プロフィール

元国税調査官の税理士 松嶋洋
東京大学を卒業後、国民生活金融公庫を経て東京国税局に入局。国税調査官として、法人税調査・審理事務を担当。現在は118ページにも及ぶ税務調査対策術を無料で公開し、税理士を対象としたコンサルティング業を展開。

※注意事項:記載については、著者の個人的見解であり正確性を保証するものではありません。本コラムのご利用によって生じたいかなる損害に対しても、著者は賠償責任を負いません。加えて、今後の税制改正等により、内容の全部または一部の見直しがありうる点にご注意ください。

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