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譲渡所得の計上基準は準確定申告における相続税等にどう影響するか

個人が土地建物や株式を売却した場合に課税される譲渡所得税については、その譲渡収入をいつの年分の所得とするのか、そのタイミングが問題になります。専門的には、このタイミングを収益の計上基準などと言いますが、譲渡所得の収益計上基準はその資産を引き渡したタイミングで計上する、引渡基準を原則とします。このため、引渡しがあった年度の所得として申告すれば問題になりません。

一方で、引渡基準の例外として、契約日基準も認められています。契約日基準とは文字通り、引渡日ではなく譲渡契約をした日の所得とする方法です。契約日基準と引渡基準はどちらかを選択することができますので、場合によっては有利不利の選択をする必要もあります。

準確定申告の場合

実務上、この2つの基準の選択が問題になる局面の一つに、個人の準確定申告があります。準確定申告は、死亡した個人の死亡日までの所得税の申告を言い、原則として死亡した日から4月以内に、相続人が行う必要があるとされています。被相続人が死亡の日までに、土地等を売却していれば、準確定申告でその申告が必要になります。

ここで問題になるのは、売買契約を締結して、引渡し前に被相続人が死亡した場合です。この場合、契約日基準なら準確定申告で申告が必要になり、引渡基準なら準確定申告に含める必要はありません。この点、どう考えるか問題になる訳ですが、準確定申告においても、契約日基準と引渡基準の選択ができるとされています。

相続税等の有利不利が発生する

ただし、準確定申告の場合には、その他の特例の関係で有利不利が発生しますので留意しておく必要があります。大きく、相続税の取得費加算と、債務控除という特例が関係します。

相続税の取得費加算とは、相続税の対象になった財産を一定期間内に譲渡した場合、一定の相続税を財産の譲渡所得の計算上、控除できる財産の取得費に加算できるとする制度です。その譲渡を準確定申告に含める契約日基準の場合、相続税を納税しない被相続人が財産を譲渡したことになりますので、この制度は使えないとされています。一方で、引渡基準は対象になります。

次に、債務控除とは被相続人が納税すべき租税などの債務を、相続税の計算上控除できるという制度です。契約日基準の場合、準確定申告で発生する、譲渡所得税は被相続人の租税債務として債務控除が出来ます。一方で、引渡基準は相続人が所得税を納めるべきとされますので、債務控除の対象とすることはできません。

このような相違も含めて、どちらを選択するか決定する必要があります。

専門家プロフィール

元国税調査官の税理士 松嶋洋
東京大学を卒業後、国民生活金融公庫を経て東京国税局に入局。国税調査官として、法人税調査・審理事務を担当。現在は118ページにも及ぶ税務調査対策術を無料で公開し、税理士を対象としたコンサルティング業を展開。

※注意事項:記載については、著者の個人的見解であり正確性を保証するものではありません。本コラムのご利用によって生じたいかなる損害に対しても、著者は賠償責任を負いません。加えて、今後の税制改正等により、内容の全部または一部の見直しがありうる点にご注意ください。

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