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居住用財産の譲渡の特例における居住用家屋の範囲はどう解釈すべきか

確定申告でよく使われる譲渡所得の特例の一つに、居住用財産の譲渡所得の3千万円控除という特例があります。これは、居住の用に供している家屋等について一定の要件を満たす譲渡をした場合、その譲渡所得のうち3千万円までを非課税とする特例を言います。この特例の適用上、問題になることの一つに、居住用財産の範囲があります。

一構えの解釈

この範囲のうち、よく問題になるのが二棟以上の建築物がある場合です。例えば、母屋と離れなど、二つの建築物が同一の居住用土地に建築されていることもあります。この場合、母屋と離れの両方について、本特例の対象になるか問題になります。

本特例における居住用財産の範囲は、二以上の家屋が併せて「一構え」となる家屋を含むとされています。一構えとは、一体で居住の用に供されていることをいい、その判断は家屋の規模、構造、間取り、設備、各家屋間の距離などに基づいてなされるとされています。一体で居住の用、というのが重要で、独立の居住用家屋と判断されると、一構えになりませんので、両方は本特例の対象にはなりません。

その他、一構えか否かは客観的状況によって判断すべきとされています。主観的に、一体で使っていますから、と主張しても、客観的に見て一体でないと判断されれば、特例の適用が否認される場合があります。

空き家の譲渡特例

ところで、居住用財産の譲渡所得の特例には、3千万円控除の特例のほか、空き家の譲渡所得の特例と言われる特例もあります。これは、相続により被相続人が一人で居住していた、一定の家屋等を相続し、その後一定の要件を満たす譲渡をした場合に認められる特例で、この場合もその譲渡所得について3千万円控除が認められます。高齢化社会に伴い、空き家が社会問題になっていることもあって、このような特例が認められています。

居住用家屋の範囲が異なる

注意したいのは、この特例の対象になる、被相続人が居住の用に供していた家屋には、「一構え」の建築物を含まないとされている点です。このため、一体で利用されている母屋と離れがある場合には、母屋部分のみが特例の対象になります。この点、通常の3千万円控除は現に居住している家屋等が対象になるため、課税をより軽減されるべきである反面、空き家の特例は、相続した家屋等が対象であるため、そこまで課税を軽減させる必要はないため、と解説されています。

同じ居住用財産の譲渡所得の特例でも、範囲が異なりますので注意してください。

専門家プロフィール

元国税調査官の税理士 松嶋洋
東京大学を卒業後、国民生活金融公庫を経て東京国税局に入局。国税調査官として、法人税調査・審理事務を担当。現在は118ページにも及ぶ税務調査対策術を無料で公開し、税理士を対象としたコンサルティング業を展開。

※注意事項:記載については、著者の個人的見解であり正確性を保証するものではありません。本コラムのご利用によって生じたいかなる損害に対しても、著者は賠償責任を負いません。加えて、今後の税制改正等により、内容の全部または一部の見直しがありうる点にご注意ください。

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