HOME > 法律コラム > 税理士への損害賠償請求の殆どが、届出の申告期限切れが理由というまさかのケアレスミス?!
消費税には、簡易課税制度と言われる特殊な計算を行う制度があります。この簡易課税制度は、使い方によっては消費税の節税に使えますが、反面この適用に当たっては、いろいろな制限が設けられています。
そのうち、単純な要件であるものの、ミスが多いポイントは、「簡易課税制度を適用しようとする事業年度の初日の前日までに、税務署に届出を行う」という要件です。
適用しようとする事業年度の初日の前日とは、簡単に言えば、前事業年度の決算日です。このため、3月決算法人が平成28年3月期から簡易課税制度を適用しようとすれば、平成27年3月31日に届出を提出すればいいことになります。
これだけ聞くと、なぜ間違えるのか、と思うでしょうが、重要なポイントはその提出日が土日祝日の場合です。
例えば、3月15日が土曜日の場合、個人の確定申告期限は3月17日となります。これは、土日祝日は税務署が空いていませんので、その次の営業日まで期限を延長する、というルールとなっているからです。
このルールは、税務の世界では非常に常識的なところなのですが、どういうわけか消費税の届出に関しては、このルールが適用されないことになっています。
このため、先の例で平成27年3月31日が土曜日であっても、それまでに消費税の届出を提出しなければならないのです。税務署の窓口に提出する場合には、税務署は空いていませんので、3月30日までに持参しなければNG、となります。
土日祝日は期限延長、というルールが常識的すぎるため、消費税の届出に関して、つい間違えてしまうことがあるのですが、困ったことに、消費税の届出一枚を提出するか否かで、企業によっては数千万円程度も税負担が異なる場合があります。
単なるケアレスミスが命取りになるのが消費税の届出で、税理士の過失に対する損害賠償請求のほとんどが、実はこの消費税の届出に関するものなのです。
専門家としてこのようなミスがあることは、もちろん許されていいわけではありませんが、税理士を訴える手間も大きいですし、何より税理士は個人事業が中心ですから、企業が被った損害の全額を支払えるのか、というと疑問符も残ります。
このため、消費税の届出に関しては税理士に任せきりにならず、提出の有無や提出日について、きちんとチェックする必要があると言えます。