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ニセ医学だと分らず、信頼して治療を受け、亡くなってしまったら医療過誤?!

医学とニセ医学の境界線は非常に曖昧です。

医学的根拠がしっかりと裏付けされた医学と、根拠が全くないニセ医学ですが、当然その間にはどちらか判別がつかないケースもあります。

例えばホメオパシーのように医学的根拠が全くないと言われているような治療を受け続け、その結果として治らない、あるいは亡くなってしまった場合、これは医療過誤になるのかどうか、医療問題に詳しい森谷和馬弁護士に聞いてみました。

ニセ医学であるにも関わらず、医師を信じ、その結果中々治らない、もしくは悪化・死亡となった場合、医療過誤となるのでしょうか?

【医師でない場合】
もしも医師免許がないのに医療行為をすれば、医師法違反で刑罰の対象になります。無資格者の「医療」を受けた結果として「患者」に何らかの被害が起きた場合。
(1)相手が「医師である」と偽っていてそれを信じて「治療」を受けた場合には、損害賠償を請求できると考えて良いでしょう。
(2)相手に医師免許がないことを知りながら「治療」を受けた場合には、「過失相殺」という原理を適用して、「患者」側にも幾分の責任を負わせようという考えがあり得ます。つまり、被害の全部について損害賠償を求めるのが難しくなるかも知れません。

実際の裁判例として、医師ではないのに「断食道場」を開いて糖尿病の「治療」をしたケースで、死亡した「患者」側の過失を7割とした裁判例もあります(但し、最高裁で破棄されました)。

【医師である場合】
次に、相手が医師免許を持った医師であることを前提に説明します。何が本当の医学で、何が「ニセ医学」であるかという線引きは簡単ではありません。今の日本では健康保険制度が普及しており、保険が適用される診断・治療法が事実上の標準となっています。しかし、医師はこの標準に拘束されている訳ではなく、保険外で別の治療法を行なうことも違法ではありません。

医師から「自然医学療法」という一種の食事療法を受けていた乳癌の女性が死亡したケースで、裁判所は、到底病気の治療とは認められないような特別の場合を除けば、独特な理論に基づく特殊な治療法であるというだけでは医師の責任を問えないと言っています。

ですから、「ニセ医学」と明らかに分かる場合、それは本来の意味での医学的治療とは言えないので、それによる被害は賠償する責任があるでしょう。

「ニセ医学」とまでは言えないケースでの医師の責任は微妙ですが、それが、一般の診断・治療とかけ離れた内容であれば、その内容や治療成績などが一般的・標準的な診断・治療と比較してどうなるかを患者側に説明する必要があるでしょう。特殊な治療法を受けようとする患者は、往々にして藁にもすがりたい心境になっており、冷静な判断が難しい状態にあります。医師がそうした心理状態を利用して、自分流の治療法を受け入れさせるのは公正ではありません。

患者には、医師から正しい情報を受け、それを理解し納得した上で治療を受けるという「自己決定権」があります。この「自己決定権」が保障されないままで治療を受けて悪化したり死亡した場合には、説明義務の違反として損害賠償を求める余地があります。

上に挙げた「自然医学療法」の事件では、裁判所は医師の説明義務違反を認め、慰謝料として600万円が妥当としました。

医師からの治療方針の説明が正しいかどうかはどうやって判断すればいいでしょうか?

医師から病気の内容や治療方針などの説明を受ける際の注意点

(1)事前に自分で勉強する。
今では本を読んだり、インターネットを見たりして相当の情報が手に入ります。予め予備知識があれば、医師の説明に対して更に質問したりすることもできます。

(2)複数で説明を聞く。
病気という深刻な事態なので、患者本人に、普段のような冷静さは期待できません。医師に対する気後れもあるでしょう。そこで、家族やごく親しい友人が一緒に説明を聞くことで理解や質問がし易くなります。

(3)他の医師の意見を聞く。
今は医師の間でも「セカンドオピニオン」という考え方が広まっていて、そのための紹介状を書いてくれる医師もいます。また「セカンドオピニオン外来」を開いている医療機関もあります。

もしも今かかっている医師が、あなたが他の医師のセカンドオピニオンを聞くのを嫌がるようでしたら、その医師は敬遠した方が良いかも知れません。そうした医師は、自分の治療方針に自信がないかまたは反対に自信過剰である可能性があります。

取材協力弁護士  森谷和馬 事務所HP
千葉県弁護士会所属。1976年に弁護士登録した当初から現在に至るまで、医療過誤・医療事故を患者側で手がけています。またその他に離婚問題や遺言、相続、遺産分割なども幅広く対応。

Stop!医事紛争―医師も患者も、思いは同じ
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