HOME > 法律コラム > 「取れるところから取る!」という相続税増税。ポイントは収入格差ではなく、格差自体の固定化。
来年(2015年)から増税が決定している相続税。
国の財政難から、税金を取れるところから取ろうというスタンスは明確です。
さて、世界を見渡してみると、相続税が無い国の方が多いと知っていましたか?
先進国では、スイス、カナダ、オーストラリア、ニュージーランド、スウェーデン、イタリア、マレーシア、シンガポールなどは、相続税を廃止にしています。
国の意向に反し、日本でも相続税を廃止にするべきだという議論が以前からあります。
この論拠は、「相続税は2重課税だから」というもの。どういうことでしょうか?
相続税は、亡くなった人(親など)の財産を、相続した人(子供など)が納める税金です。
しかし、ここで考えてみてください。
亡くなった人の財産は、過去に稼いだお金から、税金(所得税など)を支払った手残りなのです。
この財産に対して、さらに相続税を課すということは、税金を課した後にさらに税金を課すという意味では、「2重課税」とも考えられるわけです。
先進国の多くで相続税が廃止になっている一方で、相続税(アメリカでは「遺産税」)廃止に関してここ数年、議論が絶えないのがアメリカです。
政権が変わるたびに、相続税の廃止もしくは減税に関して議論されていますが、驚くことに、世界で数本の指に入る大富豪たちこそ、相続税廃止に反対しているのです。
相続税が廃止になればもっとも恩恵を受ける大富豪たちが、なぜ相続税廃止に反対するのでしょうか?
アメリカ議会の公聴において、ビル・ゲイツやウォーレン・バフェットなどは、相続税の継続を次のように主張しました。
「次のオリンピックの代表選手を、昔のオリンピック選手の子供だけから選ぶようなものだ」
つまり、相続税を廃止すれば、階級が固定され、金持ちの一族は常に金持ちになるという主張です。
「結果の平等」ではなく、「機会の平等」を考えれば確かに、親から子供に引き継がれる財産に課税する相続税は、必要なものとも考えられるわけです。
日本では相続税の廃止議論が活発化するどころか、貴重な財源として課税が強化される方向で動いています。その一方で、相続税が多額になると見込まれる富裕層ほど、相続税がない国に移住する動きが大きくなっているのも事実です。
この「キャピタルフライト」を止められない限り、相続税を増税すればするほど、日本から富裕層がいなくなってしまう可能性が高まることもまた、視野に入れて議論すべき問題といえます。