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トヨタはなぜ5年間も税金を納めてないのか?そのスキームを解説!

日本の上場会社の多くは3月決算であることから、5月中に各社の業績発表が行われ、注目を集めることになります。今年の決算発表で、あらゆる意味で注目を集めたのは、世界のトヨタでしょう。なにせ決算発表時に、社長自身がこう発言したのですから。

「社長になってから国内では税金を払っていなかった。」

2008年度から2012年度の5年もの間、法人税を支払っていなかったトヨタ自動車

トヨタ自動車の2014年3月期連結決算によると、グループの世界販売台数が世界で初めて年間1000万台を突破。
売上高は前期比16.4%増の25兆6919億円、営業利益は6年ぶりに過去最高を更新して、73.5%増の2兆2921億円。
税引き前当期純利益は73.9%増の2兆4410億円の好決算。

一方で、2008年度から2012年度の5年もの間、法人税を支払っていなかったというのですから、驚きです。

なぜ世界のトヨタが、5年間も税金を納めていないのでしょうか?

販売台数世界一のトヨタ自動車

まず、トヨタ自動車の決算書を確認してみましょう。

「法人税、住民税及び事業税」の欄をみると、リーマンショックの影響を大きく受けた2009年度を除くと、100億円以上の納税をしており、2008~2012年度の5年間では合計1212億円の納税をしていることがわかります。

このことから、トヨタの社長が言う「国内では税金を払っていなかった。」とは、法人税(国税)であって、住民税や事業税などの地方税は納めていたことがわかります。

では、なぜ法人税は5年間も納めなくていいのでしょうか?

赤字になった翌年に黒字があれば、赤字分を相殺して税金を計算できる欠損金の繰越控除

法人税は、「欠損金の繰越控除」があります。
赤字になった翌年に黒字があれば、赤字分を相殺して税金を計算できるというものです。この繰越控除は、以前は7年、今では最大9年間適用できることになっています。

再度トヨタ自動車の決算書をみると、2009年3月期の税引き前当期利益は5604億円の赤字。
この年は明らかに、法人税を納める必要がなかったでしょう。しかし、2010年3月期は2914億円の黒字。以降、5632億円、4328億円、13年3月期には1兆4036億円もの黒字ですから、欠損金の繰越控除だけでは、5年もの間、法人税を納めなくていい理由にはなりません。

利益が多くても、法人税を少なくできる2つの制度

利益が多額に計上されても、法人税が少なくてすむ理由は2つ考えられます。

1つは、「試験研究費の税額控除」です。
新製品や新技術の開発にかかった費用については、約1割を税金から差し引いて計算することができます。年間数千億円の研究開発費をかけるトヨタであれば、数百億円の法人税が減ることになります。

また、もう1つが「外国子会社配当益金不算入制度」です。
2009年の税制改正で導入されましたが、これは、海外の子会社から受けた配当について税法上の益金には算入せず、その分だけ法人所得を少なく計算することで法人税を軽減するものです。

2011年トヨタ自動車が他の会社から受け取った配当は、4752億円もありました。
この大半が海外子会社からの配当でしょう。これらには法人税が事実上かからないため、法人税がゼロとなったのでしょう。

法人税率が低い他国を利用したAppleやGoogle

アップルやグーグルは、アイルランドやオランダを利用して、実行税率を10%以下に抑えてきたことから、アメリカ議会でも問題になりました。

世界のトヨタがそこまではしていないにしても、数千億円単位で利益を計上している年ですら、法人税を納めていないことになるのは「いかがなものか」という議論は当然かもしれません。

大企業だからこそ優遇されている税制も多く、これを機に見直す必要性があるでしょう。

執筆  久保憂希也
1977年 和歌山県和歌山市生まれ
1992年 智弁学園和歌山高校入学
1995年 慶應義塾大学経済学部入学
2001年 国税庁入庁 東京国税局配属
東京国税局管内の税務署で税務調査を担当。
2008年 ㈱InspireConsultingを設立。税務調査のコンサルタントとして活動。
人気のセミナー講師として年間50回以上、セミナーの壇上に立つ。
著書には、「~元国税調査官が斬る~税務調査の真実」「元国税調査官が解説
実例・判決で学ぶ税務調査の深奥」「元国税OBによる税務調査と実務対応」「社長、御社の税金は半分にできる!」
「社長、税務調査の損得は税理士で決まる!」「すべての日本人のための 日本一やさしくて使える税金の本」など、多数。

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