HOME > 法律コラム > フリーランスにとって死活問題である「経費になるのか、ならないのか」を専門家が解説!
個人事業主の税務調査を見ていますと、往々にして費用が事業の経費、すなわち「必要経費」に該当するか否かが問題になります。
先日、司法書士が支払ったロータリークラブの会費が必要経費にならない、とされた事案がありました。
この司法書士は、ロータリークラブの活動を通じて顧客を開拓していましたので、当然に必要経費になると主張したのですが、その主張はすべて排除されています。
先の会費は、営業に関わる費用ですから、会社経営を考えるのであれば当然に経費になる、とお考えになる方も多いと思います。
しかし、会社など法人ではない個人については、事業に「直接必要」と認められるものだけが必要経費となる、という通説があります。
先の会費は、確かに「顧客を獲得する」という営業上の必要性から支出したものと思われますが、司法書士の仕事は登記等の手続きであるところ、司法書士の業務に直接必要とは言えない、と判断されたのです。
ところで、必要経費に関する法律を読んでみると、事業に「直接必要」な費用だけが必要経費になる、とは書かれていません。単に、事業に「必要」な費用であれば、必要経費になる、と書かれているのです。このため、通説と法律の内容は一致してはいないのです。
なぜこのような不一致が生ずるかと言えば、個人事業主の記帳状況が法人に比して非常によくないからです。記帳状況がよくないということは、税務調査で後日申告を確認する際、必要経費の判断が適正になされたのか、税務署が検証することが難しいということを意味します。
このような事情があるため、敢えて個人の必要経費は事業に「直接必要」な費用に限定されるとして、経費を制限的に考えているのです。
困ったことに、裁判所もあまり税の法律には詳しくありませんから、税務署が主張する内容をそのまま認めることが多くあります。必要経費は税務署が事業に「直接必要」なものとしている以上、そのような取扱いが正しいと判断し、結果このような通説がまかり通っていると考えられます。
困ったことに、裁判所の判断は非常に大きな影響がありますから、裁判所のお墨付きがあれば、法律があるにせよ、その判断を優先させる実務も多々行われています。このため、個人事業主の所得税の申告に関しては、その必要経費の範囲は事業に「直接必要」な費用だけ、と考えておいた方がいいのかもしれません。