HOME > 法律コラム > 「いじめ→引きこもり→不登校→中卒→対人恐怖症→ニート」当時いじめた人を訴えるのってどうなの?
いじめは大きな社会問題になっています。
いじめが原因で引きこもり、不登校、その結果最終学歴は中卒。
学歴不問の就職先はありますが、対人恐怖症のため、外出すら困難になり、ニートに。
こんな人生になったのは、あの時いじめてきたクラスメートだ!
さて人生がおかしくなったのは、少年時代のいじめだという理由で、当時のクラスメートや、その両親、学校に損害賠償請求はできるのかどうかを清水弁護士に話を聞いてみました。
民事における時効と一口にいっても,その請求権の発生原因によって期間が異なっています。
本件のような「いじめ」を理由とする場合にいじめをしていた人物に対してする請求として考えられるのは,不法行為に基づく損害賠償請求というのが素直な考えになります。
不法行為の時効については,「被害者又はその法定代理人が損害及び加害者を知った時から3年」とされます。
いじめの場合,その被害や損害はまさにいじめにあっているときに分かることになるので,いじめを受けたときから3年が時効期間となります。仮に,加害者が誰か分からなかったという場合は「不法行為の時から20年を経過すると,請求はできないということになっています。
このように時効期間が短いということもあり、そもそも少年時代のいじめを理由に損害賠償請求するということは、基本的には難しいと思ったほうがよいと思います。
もっとも、時効というのは「援用」という意思表示をすることによって、はじめて効果を生じるとされています。そのため、時効の主張をされなければ、損害賠償が認められる余地はあります。
仮に、そのような状況があるとした場合、いじめを立証する方法としては、当時の日記、友人や親などの証言といった程度のものしかないのではないかと思います。暴力を振るわれて怪我をしたというようないじめであれば、そのときの診断書やカルテがあれば、それらも証拠になります。
ただし、「いじめが原因で」引きこもり、不登校、その結果最終学歴は中卒になった、さらには対人恐怖症で外出すら困難になったといえるかについて、それが裁判では認定されるかというと、かなり懐疑的です。
このような他の原因が影響を及ぼしている可能性が高いと思われるものに、因果関係があるとされる可能性はかなり低いと思います。
そのため、認められるとしても、いじめの存在と、それに対する慰謝料程度のものになると思料されます。
仮にいじめの事実を把握することができていたということを立証できるのであれば、それを放置したということをもって不法行為であると捉えることができます。また、学校にはいじめが発生しないように配慮する安全配慮義務があるといえるため、その違反を理由に債務不履行責任の追及をする余地があります。
安全配慮義務違反の基づく請求は、債務不履行責任となり、この時効期間は10年になります。
責任追及をするには、当時学校がいじめがあるということを具体的に認識しながら、何もしなかった、あるいは当然にいじめの事実を把握するべきだったのにそれを怠っていたということを立証する必要があります。そのためには、当時、学校には申し入れをしているという事情であるとか、周囲の状況から気づくことができたはず、ということを示す証拠が必要になります。