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法律を知らない人に法律を守れと指導される税務調査の実態

税務調査は一般的に、申告納税制度を担保するために設けられている制度と言われています。
具体的には、納税者が申告した内容が、法律に照らして問題がないか、後日チェックする仕組みを設けることで、納税者に適正な申告を要請することが税務調査の建前なのです。

ただし、この建前は基本的には守られていないと考えます。なぜなら、税務調査に実施する調査官は、基本的にはチェックすべき法律の内容も知らないからです。

実は法律を知らなくても税務調査は可能

法律を知らない人間に、法律を守れと指導されるという、考えもつかない実態が税務調査にはあるのですが、法律を知らなくても税務調査はできます。というのも、税務調査といっても基本的にはサラリーマンである公務員が行うものですから、非常にマニュアル化されており、どこをチェックするかなど、細かい定めが設けられているからです。

その他、税務調査においてはそれほど複雑な法律の問題はあまり出てきません。出てくるのは、誰の目にも明らかな不正取引、いわゆる脱税の問題が多いからです。申告しなければならない売上をごまかし、簿外口座にプールしていた、となれば、問題があることは明らかですから、法律を解釈する、といった問題はそれほど出てこないことが多いのです。

加えて、難しい法律が絡む問題は、金額等にもよりますが、税務調査官がそれを発見したとしても、積極的に是正させないことも見られます。難しい法律が絡む問題を是正させるとなると、かなりの手間がかかりますし、あくまで税務調査は不正取引を発見することに重点が置かれているためです。

不正があるかどうかをとにかく重視する税務調査

こういうわけで、不正取引を発見することに税務調査の力点が置かれていることもあり、不正取引を行わなければ税務調査はそれほど怖いものではないのです。このため、不正取引をしてしまい、税務調査でそれが発見されたのであれば、しっかりと反省し、是正しましょう。

反面、不正取引でないものについて、十分な交渉を行わず、安易に妥協することも見られます。こうなると、非常に損な結果になります。

このような場合には、何が問題になるのか、くわしく税務調査官に内容をヒアリングする必要があります。とりわけ、彼らは法律に詳しくありませんので、根拠となる法律がどの法律の第何条に書かれているのか、といった点にまで踏み込んで、正確な指導を求めてください。

執筆  松嶋洋 WEBサイト
平成14年東京大学を卒業後、国民生活金融公庫を経て東京国税局に入局。国税調査官として、法人税調査・審理事務を担当。国税局を退官後、経団連関連の税制研究所において、法人税制を中心とするあるべき税制の立案と解釈研究に従事。現在は、税務調査対策及び高度税務に関するコンサルティング業務に従事するとともに、税理士向けに税務調査・法令解釈のノウハウにつき講演執筆活動を行う。

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