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税金を取りに行く目的である税務調査が、赤字会社を調査する意味ってあるの?

税務調査の都市伝説の一つに、赤字会社には調査に来ない、といったうわさがあります。
税務職員時代の経験を申しますと、税務調査は税金を取るのが仕事ですから、税金をとりにくい赤字会社には行きたくないことも事実です。
しかし、赤字会社であっても税務調査をしないなどということは決してありません。

赤字会社は不正取引が多い!

意外に思われるかもしれませんが、私の経験上、法人税を納める必要がない赤字会社の中にも、不正取引を行っている会社はかなり多くある、という印象があります。実際のところ、黒字のグループ会社の利益を赤字会社に意図的に付け替えて節税を図る、といった不正計算が多々報告されています。

このような事情がありますので、税務署はグループ会社を一斉に税務調査することもかなり多くあります。となれば、赤字会社も含めて税務調査がなされ、グループ会社全体で見ると、非常に大きな税金の追徴がなされる、といった事態が多数見られます。

その他、税務署は取引先を税務調査する反面調査の権限がありますので、取引先の税務調査の一環として、赤字会社に反面調査が実施されることもあります。取引先の税務調査ですから、自社には関係ない、とお考えになる方も多いですが、税務署は反面調査の際、反面調査先の情報も収集することがあります。こうなると、反面調査を通じて自社のアキレス腱を把握される、といったこともあります。

消費税や源泉所得税は赤字も黒字も同じ

その他、現状会社に対する税務調査は法人税が中心となっていますが、今後は法人税以外の税金、すなわち消費税や源泉所得税が税務調査の中心となると見込まれています。法人税は減税の方向性が打ち出されている反面、これらの税金は増税されることはあっても減ることはない、と考えられるからです。

法人税は会社の利益に対して課税されますので、赤字会社は法人税を追徴することは難しいですが、法人が納める消費税や源泉所得税は、利益に関係ありません。となれば、利益に関係のないこれらの税金を取るための税務調査が今後頻繁に行われる可能性も大きいわけで、赤字会社でも関係なく税務調査が行われると考えられます。

特に、中小企業は景気状況がまだまだ厳しく、なかなか黒字を出せません。税務署も同じ会社ばかりを調査するわけにはいきませんので、赤字会社でも税務調査は行われると考えるべきなのです。

執筆  松嶋洋 WEBサイト
平成14年東京大学を卒業後、国民生活金融公庫を経て東京国税局に入局。国税調査官として、法人税調査・審理事務を担当。国税局を退官後、経団連関連の税制研究所において、法人税制を中心とするあるべき税制の立案と解釈研究に従事。現在は、税務調査対策及び高度税務に関するコンサルティング業務に従事するとともに、税理士向けに税務調査・法令解釈のノウハウにつき講演執筆活動を行う。

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