HOME > 法律コラム > 不正行為でもペナルティが課されない裏ワザとその落とし穴を解説【税務調査対策】
11月18日に、医療法人「徳洲会」の徳田虎雄元理事長がグループの病院建設に当たって、ゼネコンから受け取ったリベート約1億円を税務申告していなかったことが分かり、熊本国税局は所得隠しと判断したようです。
通常、税務調査で悪質な不正行為が見つかると、それに対する制裁として、重加算税という重たいペナルティーがかかると言われていますが、この件は悪質な不正行為を行っていると国税局は認定しているにもかかわらず、重加算税がかからなかったようです。
不正行為を行っているのに、ペナルティーがかからないと聞くとおかしい気がしますが、その理由は何なのでしょうか?
報道にもありますが、重加算税がかからなかったのは、税務調査前に修正申告したことにあります。税務調査が実施される前に、納税者が反省して間違いを正す申告(修正申告)を行うと、重加算税などの加算税と言われるペナルティーはかからないこととされているのです。
このように、あらかじめ自らが反省して行う修正申告(自主修正)に対しては、いわゆる納税者に反省の機会を与える、という趣旨があり、ペナルティーをかけないという仕組みが設けられているのです。
不正に対するペナルティーである重加算税であってもこの点は同じで、結果として不正取引を行っていたとしても、重加算税はかからないことになるのです。
このように申し上げると、不正取引を行っても、税務調査前に自主修正を行えば大丈夫と考えられるかもしれませんが、それは大きな間違いです。なぜなら、刑事罰の対象となる脱税については、自主修正を行おうと、許される話ではなく、刑罰の対象となると言われているからです。
脱税は、確定申告期限において不正行為があれば、成立するというのが通説です。このため、確定申告期限後に自主修正を行っても、不正行為は成立しているから刑事罰の対象になる、とされているのです。
脱税も重加算税も基本的には不正取引に対する制裁ですから、同じものと勘違いされる方も多いところですが、脱税は刑事罰、重加算税は刑事罰以外の制裁とされており、専門的には両者は似て全く非なるものなのです。
安易な理解をしておくと、いざというときには自主修正をすればいいと勘違いして大変なことになるわけで、やはり不正取引はやはりおごそかに慎むべきなのです。