HOME > 法律コラム > 強姦された被害者が告訴を取り下げるなんてありえるの?
警察庁が発表している「強姦・強制わいせつに関する統計」によると、平成22年に起こった強姦の認知件数及び検挙件数は1289件(検挙件数1063件)となっています。
また被疑者と被害者の関係性(平成22年中の検挙)では、親族や知人友人、職場関係者などの面識有が41.3%(面識無が58.6%)、そして強姦罪に対する全体の起訴率は47%でした。
この数字を皆さんはどう考えますか?
今回は強姦罪について、少なくない不起訴の件数とその理由を星野宏明弁護士に聞いてみました。
刑事訴訟法248条は,「犯人の性格,年齢及び境遇,犯罪の軽重及び情状並びに犯罪後の情況により訴追を必要としないときは,公訴を提起しないことができる」と規定しており,強姦罪に限らず,検察官は,有罪となりうる証拠があっても,一切の事情を総合考慮して,不起訴とすることができます。
これを検察官の起訴裁量と呼びます。
形式的には犯罪の要件を満たしており,証拠も十分であっても,被疑者が十分に反省していて刑務所に送る必要までない場合や,被害者が犯人を許して処罰を望まなくなっている場合,被害者が公開の法廷での裁判を望まない場合などに不起訴とすることを認めたものです。
全ての犯罪行為を杓子定規に起訴することは,かえって被疑者の更正にプラスとならず,被害者にも余計なダメージを与えることがあるため,このような制度となっています。
強姦罪や強制わいせつといった性犯罪の場合,さらに告訴という要件が絡んできます。これらの犯罪は,被害者の処罰意思を尊重するため,被害者等の告訴がなければ公訴提起できないことになっており,告訴がなかったり,いったんなされた告訴を被害者が取り消したりした場合には,そもそも起訴できず,不起訴とする他ありません。
「被害者が告訴を取り下げることなんてそんなにあるのか?」と思われる方もいるかもしれませんが,例えば知人・交際相手・親族による犯行の場合には,話し合いで関係修復され,もはや被害者が処罰を望まなくなることはよくあります。
また,全くの他人の犯行でも,真摯な謝罪と示談(被害弁償)がなされたことにより,処罰までは望まなくなることは決して珍しいことではありません。