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3倍のペナルティとなる印紙の未貼付けが届出提出で1.1倍に!でも騙されてはいけない!

印紙を貼るべき契約書や領収書に、印紙を貼っていないような場合には、印紙税に代えてそのペナルティとして3倍の過怠税がかかります。例えば、200円の印紙を貼るべき領収書に印紙を貼っていなければ、600円の過怠税の納税を求められます。

この過怠税ですが、「不納付事実申出書」を提出すると、3倍ではなく、1.1倍となるとされています。このため、先の例で行けば、この用紙を提出することで600円が220円になるのです。

実は軽減がメリットではない!

印紙税の調査においては、調査官からこの用紙の提出を求められることが通例です。3倍が1.1倍になるから得です、といった甘い言葉とともに。

しかし、甘い言葉には裏があるわけで、この用紙を提出させることで、調査官には調査の手間が削減されるという効果があります。貼っていない事実を(納税者が自主的に)申し出ることになるからです。

印紙の貼りもれの計算は面倒極まりない

視点を変えて、調査官の立場に立つとこのメリットがよく分かります。印紙を貼っていない契約書や領収書を一枚一枚確認するとなると、膨大な手間がかかります。このため、実務上は、だいたいこのくらい貼っていないと認められるとして、貼っていない枚数を推計する、という課税が行われます。

推計して課税する、となると調査官のさじ加減で大きく税額が変わってきます。このため、通常は納税者から大きな反発があるわけですが、貼っていない事実を自主的に申し出るので、印紙税の場合には反論のしようがありません。

このため、調査官としては楽に印紙税の課税ができるわけで、いわば反論が大きい推計課税を合法にするために、この用紙を提出させているのです。

推計課税は違法

納税者としても、1.1倍にまで減らしてもらえるのなら異論はない、というわけでこの用紙を出すことが通例ですが、押さえて欲しいことがあります。それは、実務上推計課税をしていると言っても、法律上推計は認められていない、ということです。

法律上グレーなものをシロにするために、この用紙を提出させているのが正直なところなのです。このため、安易な課税につながらないよう、提出に当たっては税務署とよく交渉しなければなりません。蛇足ですが、3倍の過怠税をかけるとなると、税務署は相当慎重な決裁が必要になりますので、じっくり交渉することが可能です。

執筆  松嶋洋 WEBサイト
平成14年東京大学を卒業後、国民生活金融公庫を経て東京国税局に入局。国税調査官として、法人税調査・審理事務を担当。国税局を退官後、経団連関連の税制研究所において、法人税制を中心とするあるべき税制の立案と解釈研究に従事。現在は、税務調査対策及び高度税務に関するコンサルティング業務に従事するとともに、税理士向けに税務調査・法令解釈のノウハウにつき講演執筆活動を行う。

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