HOME > 法律コラム > 「残業代請求にはメモが効果的!」って良く見るけど、本当にメモって効果あるの?
残業代請求を行う場合、残業の事実を労働者が証明しなければなりません。
タイムカードで勤怠管理を行っているのであれば、それ自体が有力な証拠となりえますが、もしもタイムカードで管理をしていない場合、どうすればいいのでしょうか。
そんな時によく見かける対策が、勤務時間をメモしておく事。
しかしタイムカードとは違い、少し客観性に欠けるのでは?と心配されている方も多いのではないでしょうか。
今回は残業代請求でメモがどれくらいの効果があるのか峯岸孝浩弁護士に話を聞いてみました。
証拠能力とは,ある人・物を,訴訟において証拠方法として用いることのできる資格をいいます。
刑事訴訟では証拠能力は厳格に制限されていますが,民事訴訟では証拠能力は原則として無制限です。
すなわち,民事訴訟の場合はどのような人・物も証拠にできます(なお,手形訴訟は例外的に証拠能力が制限されます。)。
したがいまして,メモも証拠能力がありますので,残業代請求の証拠として提出できます。
上述の通りメモも証拠能力があるので,証拠として提出できます。ただし,そのメモが残業代請求のためにどの程度役に立つかどうかは別問題です。いわゆる「証明力」の問題になります。
証明力とは,一定の証拠資料が事実認定に役立つ程度のことをいいます。
メモではなく,タイムカードのように出退勤時刻が記載された証拠があるのがベストです。
自分の作ったメモは,一般的に証明力は弱いと言わざるをえません。なぜなら,自分のメモは自分で自由に記載することが可能であるため,事実とは異なる内容で記載することもできてしまうからです。
もっとも,残業代請求において他に証拠がなければ,メモに頼るほかありません。メモを提出するのであれば「毎日の出勤時刻,退勤時刻」は当然として,「どのような業務を行ったか」も具体的にメモするとよいでしょう。
メモの時刻通りに残業代が認められるとは限りませんが,具体的な業務内容を裁判官に伝えることにより,裁判官が「このような業務内容では,定時に終わるはずがない。1日あたり○時間ほど残業をしているはずだ。」と,ある程度残業代を認めてくれることもあります。