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旧トステム(現LIXILグループ)創業者長女が相続財産110億の申告漏れを指摘された非上場株式評価の問題点とは?!

今月8日の報道によると、旧トステムの創業者の長女が相続財産について約110億円もの申告漏れを東京国税局から指摘された模様です。
これだけ聞くと、悪質なことをやった、という印象がありますが、その背景には評価通達6項というとんでもない武器を国税が行使した、という事情があります。

評価通達6項とは

相続税は相続した財産に対して課税がなされますが、この場合に問題になるのは、相続した財産がいくらになるか(財産の評価)です。お金や上場株式などであれば問題になりませんが、相続した土地や非上場株式については、いくらになるか定かではありません。

このため、国税庁はいくらで評価すべきか、というルールを「財産評価基本通達」で定めています。実務はこれを基に評価しているのですが、この中に「評価通達6項」というルールがあります。

そこには「この通達の定めによって評価することが著しく不適当と認められる財産の価額は、国税庁長官の指示を受けて評価する。」と書かれています。

自分でルールを決めておいて・・・

先の条文を見てもよく分かりませんが、簡単に言えば、評価通達で評価すると非常に問題がある場合には、別途国税庁が評価します、ということです。自分で決めたルールに対し、それを基準とすると不適当なことがある、という常識では考え難い内容がここにはかかれてあります。

ルールを決めると、それを逆手にとって税逃れをする、といった事態を想定しているわけですが、先の旧トステムの事案も、やりすぎた節税だから、という意味で「著しく不適当」と国税が判断し、評価額をかさ上げしたのです。

対応が大きく変わった!

自分で作ったルールを否定するわけですから、国税はこの規定をおいそれと使うことはありません。特に近年は、納税者の権利意識が高まったこともあり、非常に慎重になっていたという印象があります。

しかし、今後はこの方針を転換させ、もっと税金を取ろうというのが国税のスタンスになりつつあります。行き過ぎた節税か否かが問題になりますので、節税を行う場合には、専門家とも相談しながら慎重に対応する必要があります。

一つ言えるとすれば、あからさまな節税を避け、節税目的以外の理由を用意しましょう。節税色が薄ければ、国税もそう簡単には「けしからん!」とは言い難いはずです。

執筆  松嶋洋 WEBサイト
平成14年東京大学を卒業後、国民生活金融公庫を経て東京国税局に入局。国税調査官として、法人税調査・審理事務を担当。国税局を退官後、経団連関連の税制研究所において、法人税制を中心とするあるべき税制の立案と解釈研究に従事。現在は、税務調査対策及び高度税務に関するコンサルティング業務に従事するとともに、税理士向けに税務調査・法令解釈のノウハウにつき講演執筆活動を行う。

photo by Norio Mochizuki

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