HOME > 法律コラム > 税務調査で粉飾決算が発覚しても無視!なぜならありもしない利益分まで課税できるから!
企業の不祥事として、粉飾決算がリポートされることがあります。粉飾決算は、ありもしない在庫を上乗せするなどして、利益を大きくする決算ですが、税務調査ではこの粉飾決算は基本的に無視されます。
具体的には、粉飾がなかった場合の本当の利益に対して税金をかけるのではなく、粉飾決算によって大きく計上した利益が税金計算の基礎となる利益として、その利益を前提に税務署は税金をかけることとしているのです。
税務調査は税金をとるために行われるところ、調査官は利益を過少に計上している会社、すなわち逆粉飾をしている会社を税務調査したいと考えています。粉飾はその逆ですから、調査官としてはうまみがありません。粉飾した利益は実態のないものですから、このような利益に対しては税金をかけるべきではありませんので、むしろ減額する処理が必要になります。
減額する、となると調査官にとっては屈辱ですから、敢えて「粉飾決算についてはタッチしません。それ以外の間違いがないかチェックします」といって、(粉飾があるものの)粉飾している事実を無視して税務調査を行うことが通例です。
税金は真実の利益に対して課税すべきものですから、ありもしない利益に税金をかけると聞くと、問題がある、とお考えになる方も多いと思います。しかし、粉飾決算により利益を過大に計上した場合には、法律的にもこのような税務調査が認められています。
粉飾決算をした会社に対しては、その会社が粉飾決算を解消する処理を決算で行わない限り、税務署はその是正処理を行う必要はない、とされています。つまり、会社が粉飾決算を修正するまでは、税務署は粉飾決算による利益が真実の利益であると取り扱い、その架空の利益に対する税金も徴収できるとされているのです。
会社が粉飾決算の是正を行えば、その是正に基づき、税務署は粉飾した各年度の処理を是正します。しかし、ありもしない利益に対して課税された税金については、還付するのではなく将来にわたり控除することとしています。つまり、粉飾決算により払い過ぎた税金は、すぐにお金では返ってこないことが通例です。
銀行対策の観点から、粉飾決算を行う中小企業もかなり多いと耳にしていますが、税金の計算上も、そのリスクは小さくはないのです。