HOME > 法律コラム > 「書面添付制度で税務調査回避!」とアピールする税務署の建前と本音を大公開!
近年、書面添付制度が注目されています。書面添付制度とは、税理士がきちんと会社の申告内容をチェックしている、という書面を申告書に添付した場合、税務調査に先立って税理士に意見を聞き、その意見で問題が解決するのであれば税務調査が実施されない、という制度です。
このため、使い方によっては税務調査がなくなる、という可能性があるわけで、税理士会や税務署はその利用を後押ししています。
元税務職員として書面添付制度について本音を申し上げると、書面添付をしたからといって、税務調査がなくなることは基本的にはない、と考えています。これは、書面添付制度が調査官のニーズを満たしていないからです。
税務調査は、原始記録と言われる請求書などの会社の資料をじっくり見たり、税理士ではなく経営者の話を聞いたりした上で、事実関係を明らかにするために行われます。添付する書面には原始記録などを添付することはできませんし、意見を聞くのは税理士ですから経営者の話も聞けません。となれば、税務調査とは相いれない仕組みとなっているわけで、調査官が税務調査をしなくても大丈夫、という判断をすることは基本的には無理なのです。
このような話をすると、各方面から利用が進んでいる、という数字があるといった反論を受けます。この点、私見を申し上げると、数字は簡単に嘘をつくため信用することは難しいと考えています。
ビジネスの現場では、人気をアピールするため、サクラを用意する、といった慣習があります。これと同様に、書面添付によって税務調査がなくなった例をアピールするためには、税務調査の実施を予定していない会社を選択して、形だけ税務調査をしないとすれば足りる話です。実際のところ、大きな黒字の会社など、本当に税務調査をしないで欲しい先に対しては、書面添付にかかわらず確実に税務調査は行われている、という印象があります。
税務署時代、上級官庁である国税局からの指示で、e-Tax(電子申告)の申請件数をアップさせるために、各税務署が営業するよう指示を受けたことがあります。その際、申告などほとんどしない税務署の上司が一斉に申請書を提出しました。電子申告など関係ないけど数字はかさ上げされるから上層部に恰好がつく、という判断がなされたわけです。
これと同じように、数字合わせで実が伴わない実務が行われることもあるわけですから、数字がどうなろうと、書面添付の実効性は基本的にない、と考える次第です。