法律問題は相談LINEで解決!

HOME > 法律コラム > 「7月から始まる出国税の前に日本から脱出だ!」は大間違い!ーープロが注意点を解説!

このエントリーをはてなブックマークに追加

「7月から始まる出国税の前に日本から脱出だ!」は大間違い!ーープロが注意点を解説!

平成27年7月から出国税が導入されますが、この出国税がかからないうちに、株式の譲渡益に対して税金がかからない、香港やシンガポールに早く出国した方がいい、と考える方も多いように思います。この点、失念すると痛い目にあう制度があります。それは、事業譲渡類似株式の譲渡、という制度です。

一つ目は「業譲渡類似株式の譲渡」

業譲渡類似株式の譲渡とは、(1)譲渡年以前3年間のいずれかのタイミングで、日本に住所がない非居住者(その親族を含みます)が25%以上を所有する日本の法人の株式を、(2)年間5%以上譲渡することを言います。
この要件に該当すると、その株式の譲渡が国外で行われた場合でも、日本で課税される、とされています。

このため、平成27年7月までにシンガポールなどに出国してしまえば非課税で株を売買できる、と考えるのは早計で、25%以上を持っている日本の株式であれば、この要件に該当するかどうか逐一確認する必要がある、ということになります。

二つ目は「租税条約」

加えて、租税条約も押さえておく必要があります。租税条約とは、日本と外国で結ばれる税に関する条約を言い、この条約は日本の法律よりも優先されるとされています。

先の事業譲渡類似株式の譲渡の要件ですが、これは日本の法律に基づく要件です。このため、租税条約で別の要件を定めていれば、それとは違う要件で事業譲渡類似株式の譲渡に該当するかを判断しなければなりません。

例えば、シンガポールとの租税条約では、要件が(1)譲渡年を通じて、日本に住所がない非居住者(その親族を含みます)が25%以上を所有する日本の法人の株式を、(2)年間5%以上譲渡すること、とされています。

このため、譲渡を行う国との租税条約もチェックしておく必要があります。

「出国税を取られる前に日本脱出」は安易な節税

事業譲渡類似株式の譲渡といったリスクがありますので、国際税務など専門性が高い税務については、安易な判断はせず、専門家に逐一相談する必要があるのです。ただし、税理士も実務で国際税務に触れることは多くないところ、詳しい方の方がむしろ少ないくらいですから、慎重に専門家を探したいところです。

執筆  松嶋洋 WEBサイト
平成14年東京大学を卒業後、国民生活金融公庫を経て東京国税局に入局。国税調査官として、法人税調査・審理事務を担当。国税局を退官後、経団連関連の税制研究所において、法人税制を中心とするあるべき税制の立案と解釈研究に従事。現在は、税務調査対策及び高度税務に関するコンサルティング業務に従事するとともに、税理士向けに税務調査・法令解釈のノウハウにつき講演執筆活動を行う。

社長、その領収書は経費で落とせます!
社長、その領収書は経費で落とせます!
詳しくはこちら