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元国税が暴露する「税務調査の能力と出世が比例しない理由」とは?!

昨年立ち会った税務調査の際、担当する調査官の経歴を調べてみると、元税務署長の方でした。
このような、元税務署長の方が税務調査に来るとなると、納税者としてはただでさえ怖い税務調査がより厳しくなる、と思われると思います。
しかし、元税務署長の税務調査は極めて甘い、というのが正直なところです。

調査能力と出世は比例しない!

税務署長は、ノンキャリアであれば相当の出世コースですが、税務署は税務調査を中心業務としながら、調査能力があっても出世できないことが通例です。出世は税務調査ではなく、ゴマすりや立ち回りで決まり、職員が出世コースに乗ると、税務調査とは関係ない総務的な仕事につくことが通例です。

実際のところ、現職時代の署長の方を思い出しますと、税務調査の知識が乏しい方が多く、報告にも苦労したというのが正直なところです。このため、元税務署長の調査官であれば、税務調査のスキルが乏しく、調査が甘くなる傾向があります。

食い扶持に困るため、再任用

もともと、署長クラスで引退される方は、再任用という形で税務署に残ることなく、税理士として独立する傾向がありました。再任用されると、身分が大きく下がりますから、うまみが少ないからです。しかし、近年は署長であっても税務署に再任用され、ヒラの調査官として税務調査を行うことも多いようです。

この理由は、税理士として独立してもお客さんがなかなかつかないからです。10年ほど前であれば、署長として現職時代は持ち上げられ、引退しても税理士としてお金に不自由しない、という状況でしたが、行政改革等の影響で近年はそれがありません。このため、ヒラ職員になっても税務署にしがみついた方がいい、と考える方が多いようです。

結果として、税務調査というなれない仕事につかされる元税務署長も多いわけで、その影響として租税正義を守る仕組みである税務調査が甘くなる、という悪循環に陥ることになります。

税理士も同様に「元税務署長」という肩書に騙されてはいけない

元税務署長と名がつけば、それだけで能力が高いと思われがちですが、こと税務調査に関していえば決してそんなことはないのです。このため、臆せず交渉しましょう。

同じように、元税務署長の税理士と名がついても、税についてそれほど知識があるわけでもありません。税務調査だけでなく、税法も使わない部署に行ったからこそ署長にまで出世したことが多いわけで、名前に騙されないよう注意したいところです。

執筆  松嶋洋 WEBサイト
平成14年東京大学を卒業後、国民生活金融公庫を経て東京国税局に入局。国税調査官として、法人税調査・審理事務を担当。国税局を退官後、経団連関連の税制研究所において、法人税制を中心とするあるべき税制の立案と解釈研究に従事。現在は、税務調査対策及び高度税務に関するコンサルティング業務に従事するとともに、税理士向けに税務調査・法令解釈のノウハウにつき講演執筆活動を行う。

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