HOME > 法律コラム > 社長「タイムカードは定時で切れと全員に言っておけ」社員「了解です」ーーこれって社員も共犯?!
「残業代ゼロ法案」が国会で審議され、今非常に注目を集めています。
この「残業代ゼロ法案」は年収1075万円以上の労働者を対象としていますが、その情報が十分に行き届いていないのか、あるいは通称が誤解を生むのか、「どれだけ働いても残業代が出ない」というマイナス面が強調して報道されているようです。
またそれと同時に「残業代を削減したい、経営者に有利な法改正だ」という批判もあるようです。
経営者であれば、出来る限り人件費を削減したいと考えるのは、経営を行っていく上で仕方のないことかもしれませんが、その方法が悪質なケースもあります。今回はそんな悪質なケースについての法的責任を鈴木翔太弁護士に聞いてみました。
まずは悪質なケースについて代表的な9つのパターンをご紹介します。
(1)「うちの会社は残業代でないよ」ということを事前に説明し、残業代削減。
(2)会社で残業させず、会社指示の下、仕事を自宅に持ち帰らせる。
(3)残業上限時間を勝手に決め、それ以上は残業代を払わない。
(4)「年俸制」という理由で残業代削減。
(5)名ばかりの管理職に就け、残業代削減。
(6)残業時間を切り捨てる。
(7)フレックスという理由で残業代削減。
(8)みなし労働時間制だからと残業代削減。
(9)定時にタイムカードを打刻させて残業代を削減
上記の全ては違法性が高いといえます。
この中でも今回注目したのは(9)の「定時にタイムカードを打刻させて残業代を削減」する行為です。
これは会社のみならず、それを定時に打刻させるように働きかけた社員の存在がありますが、社員も共犯となりえるのでしょうか?
『賃金不払や労基署の調査に虚偽の申告をすることに対しては、労働基準法により、行為者と会社の双方に罰則が設けられています(121条1項参照)』(鈴木翔太弁護士)
やはり実行した社員にも罰則があるのですね。
しかし会社からの命令に対して、断りきれない社員の心情は考慮されないのでしょうか?
『万が一会社に労働時間の改ざんを指示されても、違法な行為の指示は正当な業務命令とは言えないので従う必要はありませんし、従わないことにより不利益な取り扱いを受けてもなりません。業務命令に反抗することができなかった場合等は行為者が責任を追及されないことも考えうるのですが、反抗することができなかったと裁判所が認めるのはかなり稀なケースと考えてよいでしょう』(鈴木翔太弁護士)
つまり、会社の命令のため断りきれなかった社員の心情を、裁判所は殆ど考慮しないということですね。
『勇気をもって違法行為から手を引くことが重要です』(鈴木翔太弁護士)
鈴木翔太弁護士は、こういった違法行為に加担させられるような命令は、断らないと共犯になってしまう、また断ったことによって社内での立場に不利益がでるようなこともあってはならないといいます。
つまり断ることによるデメリットは一つもないと言えるでしょう。
もしも自分がそういう立場になったときは、勇気をもって「NO!」と言えるようになりたいですね。