HOME > 法律コラム > 税法にも明記されていない法人税の計算における売上計上のタイミングとは?!
税金の計算上、しばしば問題になることの一つに、いつの売上として認識するか、という問題があります。
法人税は、事業年度ごとに申告しますので、売上を計上すべき事業年度が変われば申告するタイミングも違いますし、各事業年度において納税する法人税の金額も異なります。実際のところ、税務調査においても、売上を計上するタイミングは厳格にチェックされます。
このため、どのタイミングで売上を計上するかは非常に重要ですが、税法を読んでも具体的なタイミングは記載されていません。
法律に詳しく書いていない以上、このタイミングについては裁判なので非常に多く問題になっています。裁判例を見ると、原則としては「権利確定基準」で売上を計上するタイミングを判断する、と示されています。権利確定基準とは、売上の対価として代金をもらう権利が確定したタイミングで売上を計上する、という基準です。
例えば、商品販売について考えますと、売主は商品を引き渡した段階で、代金をもらえることが通例です。このため、商品の売上は、基本的には商品の引渡しの段階で計上することになります。
法人税は利益に対して税金が課税されるところ、代金をもらえるようになって初めて、納税に回せるお金が手に入りますので、このような基準が採用されているのです。
工事の請負については、着手金や中間金の支払いがあっても、原則として工事の完了の際に売上を計上します。着手金や中間金をもらっていますので、その分売上になると思われる方もいらっしゃいますが、仮に工事の契約が解除されるなどすれば、着手金や中間金は返還しなければならないことになるでしょう。このため、工事が完了するまでは収入が確実とは言えませんから、原則として売上に計上する必要はない、とされています。
同様に、賃借人に返金する敷金も、原則として売上に計上する必要はありません。ただし、敷金の20%を償却する、といった場合には、その20%は返金せず、賃貸人の収入として確定しますから、20%部分は売上に計上する必要があります。
そもそも返金しない、礼金も同様に収入した段階で売上に計上する必要があります。