HOME > 法律コラム > 民法に詳しい弁護士でも判断を誤る「印紙税対象の請負」と「民法の請負」の違いをプロが解説!
請負に関する契約書には印紙税の対象になりますので、工事の請負契約書などには印紙が必要になります。
この、印紙税の対象になる「請負」について非常に間違いが多い点ですが、印紙税の請負と、一般的に考えられている請負(民法の請負)は、こちらにもあるように、その範囲が異なることがあります。
このため、民法に詳しい弁護士などが請負契約にならないと判断しても、印紙税の世界では請負契約に該当し、その契約書は印紙税の対象になってしまうことがあるのです。
印紙税の請負は、「成果物」の有無で判断することとなっています。
成果物とは、サービスの成果として顧客に提供するものをいいます。たとえば、市場調査を行う場合、報告書を提供することがありますが、このような報告書はサービスの成果として提供するものですから、成果物に該当します。成果物がある場合、そのサービスは印紙税の請負、と判断されます。
一方で、同じ市場調査であっても、報告書のようなものを別途提供しない場合、成果物がないとして原則請負契約になりません。
成果物ですが、報告書のように形あるものに限定されません。印紙税の請負契約に該当する例として、ホテルなどの宿泊が挙げられます。宿泊は、一日単位で料金が発生することが通例であるところ、終わりが明確であるサービスを提供していることになります。このような、終わりが明確であるサービスについても、サービスの成果が明確ということで、成果物に該当することになっています。
自分で書いておいて申し訳ないのですが、成果物といっても一概に言えるものではなく、実務上は往々にして問題になります。
実際のところ、税理士はもちろん、税務署の印紙税担当者でも判断が困難なことが多いのです。私の税務署時代の経験を申しますと、印紙税の請負契約に該当するかどうかが分からず、印紙税担当者の多数決で決める、といったこともありました。
分かりにくいとは言っても、成果物があると税務署に判断されれば印紙税がかかるわけですから、その契約に成果物があるか否かで、印紙税の負担が大きく異なります。
多く作る契約書だけでもかまいませんから、成果物があるかどうか、税務署の担当者や印紙税の専門家に相談する必要があると考えます。印紙税の判断を間違えたために、数千万円の印紙税を追徴された事例もありますので、注意が必要です。