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全面敗訴で国税涙目となったハズレ馬券訴訟。実は国税の自爆説が有力?!

先般、外れ馬券が経費になるかが問われた最高裁判決がありましたが、大方の見込み通り、経費にならないとした国税の判断が認められず、納税者の全面勝訴という結論になりました。

国税の判断の背景には、法律でもない国税庁の指示文書である通達で、競馬を一時所得としたことがあります。
このため、通達を見直す旨を国税庁は発表しましたが、そもそも論として、今回のような違法な課税が行われたのは、通達の内容が間違っているのではなく、通達の使い方を国税が間違えたのが原因なのです。

通達は文字通りに使ってはいけない

通達には、国税庁の指示で法律をどう読むかが書かれてありますが、その使い方は、文字通りではいけない、とされています。国税庁は、通達の使い方について、「法令の規定の趣旨、制度の背景のみならず条理、社会通念をも勘案しつつ、個々の具体的事案に妥当する処理を図るよう努められたい」と指示しています。このため、文字通りに通達を使うのではなく、社会通念などを十分に考慮して通達は使わなければならないのです。

先の外れ馬券に係る事件は、専用のシステム等を活用し、一般的な趣味として行うのではなく、資産運用の一環として競馬を行っていたわけです。資産運用する場合、100%利益が出るとは限らないのは誰にとっても明らかですから、損をするようなケースについてそれを経費としない、というのは明らかに常識を無視した的外れのことなのです。

的外れな行政が行われる

通達は法律でも何でもないので、それに従う必要はありませんが、往々にして税務署は法律と同じように、「通達に書いていますので、税金は課税されます」という指導を行います。このような安易な指導があった時は、通達は文字通りに使ってはいけないため、指導が的外れであることをしっかりと主張しましょう。

ところで、このような的外れな通達の使い方がなされる理由は、税務職員が全くと言っていいほど法律に詳しくないからです。法律も知らないのに、通達を使いこなせるわけがなく、結果として納税者に大迷惑をかけている、と考えられます。

実際のところ、外れ馬券が経費にならない根拠としては、競馬の収入が「一時所得」という所得に該当するからと国税は指導していますが、法律を読むと、一時所得の範囲からは、お金儲けを目的として、継続的に行う活動から生じる所得は除かれています。「一時」のわけですから、「継続」するものはそもそも対象になりません。

今回の事件は、全く法律を検討していない愚かな課税処分だった、と考えられます。

執筆  松嶋洋 WEBサイト
平成14年東京大学を卒業後、国民生活金融公庫を経て東京国税局に入局。国税調査官として、法人税調査・審理事務を担当。国税局を退官後、経団連関連の税制研究所において、法人税制を中心とするあるべき税制の立案と解釈研究に従事。現在は、税務調査対策及び高度税務に関するコンサルティング業務に従事するとともに、税理士向けに税務調査・法令解釈のノウハウにつき講演執筆活動を行う。

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