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「納得がいかないなら言ってね=それを認めたら自らのミスを肯定」こんな心理が働く税務署の不服申立制度

税務調査の結果、申告した内容に間違いがあるとして、税務書から不利益な処分(更正処分)を受けることがありますが、このような更正処分に不服がある場合、税務署長に不服を申し立てて再度内容を審議する、異議申立てという制度が認められています。

加えて、異議申立てを経ても、まだ不服があれば、国税不服審判所に審査請求を行うことができます。なお、審査請求を経てもまだ不服があれば裁判を行うことになります。

この異議申立てと審査請求をあわせて「不服申立て」といいますが、不服申立ては裁判という強行的な制度の前段階に当たるもので、納税者が簡便に救済を求めることができるための仕組みと説明されています。事実、裁判よりも早く結論が出ますし、裁判と異なり手数料もかかりません。

異議申立てを認めると、自らのミスを肯定することにも繋がる!

簡便に救済を求めることができる、と言いながら、異議申立てで納税者が主張を認められるケースはほとんどありません。言うまでもなく、税務署は責任を持って更正処分を行っているわけで、それを見直すということは、自分のミスを認めることですから、そもそも論として納税者の主張を認めることができない、という事情もあります。

加えて、公務員の特質として、責任を負いたくないという判断をする傾向があります。異議申立てで間違った判断をしてしまうと、責任問題に発展しかねないところ、「審査請求で、国税不服審判所がきちんと見てくれるのであれば、いったん納税者を負けにしてしまおう」という心理が働きます。このため、敢えて納税者を負かす、という判断も行われます。

簡便な救済をという理念はあるものの、その理念は往々にして公務員体質に流されてしまう、という実態がここにはあるのです。

審査請求も大きくは変わらない!

審査請求を行う国税不服審判所も、多かれ少なかれ異議申立てと同じような特徴があります。国税不服審判所は、税務署から独立した組織として、より客観的な判断を行うために設けられた組織ですが、やはり責任を持って判断することには、抵抗を感じる傾向があります。「審査請求でだめでも、裁判で争うことも可能」という判断から、敢えて納税者の主張を認めず、裁判所に責任を投げることも多々見られます。

こういう事情がありますので、異議申立ても審査請求も、その理念を果たしていないという批判が多数あります。この点、数年内の改正が予定されていますが、公務員体質は変わらないですから、あまり期待することなく、更正処分を受けるリスクを減らす対策、すなわち税務調査対策をしっかりと行っておく必要があります。

執筆  松嶋洋 WEBサイト
平成14年東京大学を卒業後、国民生活金融公庫を経て東京国税局に入局。国税調査官として、法人税調査・審理事務を担当。国税局を退官後、経団連関連の税制研究所において、法人税制を中心とするあるべき税制の立案と解釈研究に従事。現在は、税務調査対策及び高度税務に関するコンサルティング業務に従事するとともに、税理士向けに税務調査・法令解釈のノウハウにつき講演執筆活動を行う。

photo by Rodger Evans

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