HOME > 法律コラム > 職人がスーツを買ったら経費になるかもしれないその理由とは?経費になるかどうかはその目的次第?!
税金を納めることは、国民の3大義務の一つとされていますが、たくさん納税をしたからといって金額に見合った見返りもなければ、本当に日本社会のために正しく使われていることさえ疑問が残る税金は、誰しも最も削減したい支出と思います。
このような事情がありますので、私も含めた税理士には、クライアントから絶えず節税に関する相談が尽きません。「税金を何とか…」と祈るような面持ちでおっしゃる方もたくさんいますがですが、この節税について、真っ先に相談されることの一つが「この支出は経費となるでしょうか?」という質問です。
実はあまり知られていませんが、経費の判断において、その支出をした本人の「個人的な事情」が考慮されることになっています。
典型例としては、ビジネススーツの購入が挙げられます。平成25年からの税制改正により、サラリーマンの必要経費と言われる特定支出控除適用要件が緩和され、ビジネススーツも原則として含まれることになりましたが、それまではスーツなどの衣装代については、私用でも使えるという点をもって経費とならない、というのが税務署の言うところの通説でした。
しかし、仮にスーツを購入する必要がないと思われる職人が、営業目的で購入した、となれば話は別でしょう。
このような職人であれば、スーツを着ること自体が非常にレアですので、購入目的は、プライベートのためか、それとも営業のためか、かなり鮮明に区分されることになります。結果として、経費と認められる余地は大きくなる、と考えられます。
実際のところ、イメージが大切になる芸能人の衣装のうち、仕事でしか着用できないような仰々しい衣装については、同じ衣装代であっても経費とできる、というのが通説であり、税務署も経費として認めている場合がほとんどです。
その他、マンガ家が(本音は娯楽としても)次回作の構想を練るという目的でマンガを買ったり、映画を見に行ったりしても、それは仕事としての側面が強いですから、経費として認められることが通例です。
経費になるかどうかの基準は「業務上必要であるかどうか」で判断されることになります。そして、それは先程述べたように、支出の目的、つまり個人的な事情に応じても、経費になるかならないかは異なります。
業務とされる目的を強調することができれば、それは経費とされる余地がある一方で、生活費とされる目的が強調されれば、それは経費とされない、となるわけです。
経費はグレーゾーンで確定した基準がない世界であるため、税務署としてもNoとする明確な根拠を示すことが難しいのです。だからこそ、その支出の目的をしっかり主張することが、相応の説得力を有することになるでしょう。