法律問題は相談LINEで解決!

HOME > 法律コラム > セクハラ・パワハラの証拠を抑えるために、敢えて誘うような行為をしたらどうなる?

このエントリーをはてなブックマークに追加

セクハラ・パワハラの証拠を抑えるために、敢えて誘うような行為をしたらどうなる?

セクハラとパワハラを行ったものには、具体的な事案にもよるが、主に以下の刑罰が課される可能性がある。
セクハラは「強制わいせつ罪、強姦罪、準強制わいせつ罪、ストーカー規制法や軽犯罪法上の犯罪」。
パワハラは「暴行罪、脅迫罪、傷害罪、侮辱罪、名誉毀損罪」。
民事においては、それぞれ使用者や加害者に対し慰謝料等の損害賠償を請求できる可能性がある。

もしも自分がセクハラやパワハラの被害者となり、加害者を訴えようとするならば、その行為があったことを証明するのは被害者となるため、証拠は欠かせない。今回はその証拠を集めるにあたって、在籍中と退職後でそれぞれできること、また証拠を抑えるために敢えて誘うような行為をした場合にどうなるのかを尾﨑英司弁護士に聞いてみた。

敢えて誘うような言動で証拠を集めても、その証拠の信頼性が下がる可能性あり!

まずはセクハラとパワハラがあったことを証明する有利な証拠とはなんだろうか。

「パワハラ、セクハラ行為ともに発言の録音(可能であれば録画)をしておことが極めて重要です。またメールやLINEでパワハラ、セクハラと思われる言動が行われている場合には、その保存をしておいてください」(尾﨑英司弁護士)

やはり録音・録画は有力な証拠となるようだ。ちなみに敢えて誘うような言動をして得られた証拠はどうだろうか。

「録音のために敢えて行為を誘うような言動をした場合、信用性を疑われ証拠としての価値が下がるので注意してください」(尾﨑英司弁護士)

これは注意するべきポイントである。つまりごく自然な状況で得られた証拠が望ましいようだ。

録音録画以外にも有力な証拠とは?!

その他にセクハラやパワハラがあったことを証明する証拠はあるのだろうか。

「パワハラ、セクハラ行為を記した個人的な日記、業務日誌、あるいは周囲にいた人の証言も有利な証拠になります。これらの証拠は、どうしても当事者の主観が入り記憶に頼るため信用性を疑われます。しかし、行為後直ちに具体的に詳細なメモを作るようにすること、あるいは行為がある度に毎回日記をつけるようにすること等で信用性を確保することも可能ですので、極力、日記・メモ等をつけるようにしましょう」(尾﨑英司弁護士)

行為があったその直後ということであれば記憶も鮮明である。また周囲の人からの証言も得やすいだろう。

退職後の証拠集めは、非常に困難!

尾﨑英司弁護士のこれまでの話を聞く限り、証拠の収集は退職後ではなく、在職中の方が有利に聞こえるがどうだろうか。

「証拠集めは在職中にするべきでしょう」(尾﨑英司弁護士)

「退職後に、周囲にいた人の証言を確保する等の証拠収集も出来ないこともないですが、在職中に比べ証拠収集は遥かに困難になります。パワハラ、セクハラ行為を受けている状況下での証拠収集は、精神的にも肉体的にも非常に辛い事だとは思います。しかし、最終的に裁判になった際に証拠がないと、裁判所もセクハラ・パワハラ行為を認定できず、被害者は泣き寝入りとなってしまいます。不当な行為を行った責任を正しく問うためにも退職前に証拠を集めておきましょう」(尾﨑英司弁護士)

例えば、同僚に証言を頼むということを一つとっても退職後であれば、かなり高い可能性で会社から証言をしないよう根回しが入ることが予想される。また、本人も証言をしたことによって社内での立場が悪くなる可能性もあり、より一層難しくなる。尾﨑英司弁護士が言うように、訴えるならば何が何でも在籍中をオススメしたい。

取材協力弁護士  尾﨑英司 事務所HP
福岡県弁護士会所属。東京大学卒業後に三菱商事株式会社に入社。同社退社後、東京大学法科大学院を経て弁護士登録。弁護士として最も重要なことは、お客様の話にしっかりと耳を傾けることです。当たり前のことのように思えるかもしれませんが、重い気持ちを抱えて弁護士に相談しようと決心された方に対し、弁護士として常に意識すべき姿だと考えています。

ライター 石川信男