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また起きた釣り銭詐欺!多くもらったことに気づいてなかったら無罪じゃないの?!

1月7日、誤って多く渡された釣り銭をだまし取ったとして、奈良県警橿原署が詐欺容疑で消防士の男性(43)を逮捕した事件は記憶に新しい。この事件はネット上でも非常に注目されたが、なんとまた同様の事件が起きたのである。
今度は宮城県石巻市内にあるコンビニエンスストアを利用した会社員の女性(47)が、釣り銭4万5000円多く受け取ったことに気づいていながら持ち去った疑いで、3月21日に宮城県警石巻署によって逮捕された。
どちらの事件も、店員の勘違いが共通している。更に逮捕された二人とも「酔って覚えてない」、「気付かなかった」と容疑を否認している。
では、本当に多く貰ったことに気づいていなかったとしたら無罪となるのだろうか。この問題について桐生貴央弁護士に寄稿して頂いた。

騙す気があったかどうかは詐欺罪成立には無関係!

お釣りを多く受け取っているにもかかわらず、これを相手方に告げないで、そのまま立ち去ってしまった場合、つり銭詐欺になる可能性があります。

ここにいう詐欺罪は、刑法246条1項において、「人を欺いて財物を交付させた者は、10年以下の懲役に処する。」と規定され、2項において、「前項の方法により、財産上不法の利益を得、又は他人にこれを得させた者も、同項と同様とする。」と規定されております。

これはどういうことかというと、人を騙して、相手方が錯誤に陥り(勘違いをして)、財産を処分した場合には詐欺罪が成立します、ということです。

この騙す行為については、相手方に積極的な働きかけを行う場合のみならず、何もしない場合も含みます。

釣り銭が多いことに気づいたならば、告げる義務を果たさないと騙し行為と認定!

何もしない場合のことを不作為というのですが、つり銭詐欺の場合、お店の人が勘違いをしてお釣りを多く渡したので、お釣りをもらった方は、積極的にお店の人を騙してはおりません。

しかし、お釣りを多く受け取れば、お店の人に対して、お釣りを多く受け取っているということを告なればならない義務があるので、この義務があるにもかかわらず、これを履行しなかったという行為を騙しとみて、詐欺罪が成立すると考えます。

従って、お釣りを多く受け取っていることを認識して、お釣りを多くもらっても構わないと認容していることが必要です。

気づいてないなら、確かに詐欺罪とはならないが…。

なので、お釣りを多く受けとった方が、そのことを認識していない場合には、詐欺罪とはなりません。

但し、店を出て、財布を覗いたら、当初予定していた金額よりも多くのお金が入っていることに気づくでしょうから、お釣りを受け取った時には、何も気づいていなかったとしても、店を出た後すぐに気付くなど、すぐに店にお釣りを多く伝えられる場合には詐欺罪になる可能性があります。

それにしても、なぜ逮捕されたのでしょうね。お店の人にお釣りを多く渡しませんでしたか?と尋ねられたら、財布の中を確認して多くもらっていましたと言って、お釣りを戻せば済んだことなのに。。。ね。

執筆  桐生 貴央 事務所HP
横浜弁護士会所属。広尾総合法律事務所代表。契約締結交渉、労働問題、債権回収、倒産処理、事業再生、事業承継、不動産明渡請求等の企業法務、遺言・相続、成年後見、交通事故、その他一般民事事件全般、刑事事件などを幅広く対応。また数々のメディアへの実績や著書もあり。

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