HOME > 法律コラム > 「どうして赤信号で渡ってはいけないの?」ーー弁護士による弁護士らしい回答とは?!
大人になれば聞くまでもない、当たり前のことだったとしても、子供からすれば「どうして?」と考えてしまうことがある。
例えば「どうして人を殺してはいけないの?」や「なんで勉強しなくちゃいけないの?」などが代表的であるが、その中に「どうして赤信号で渡ってはいけないの?」も含まれるだろう。
赤信号で渡る大人を見た子供に対して、真似をしてはいけないと親が諭すわけだが、渡ってはいけない理由を聞かれたら、貴方ならなんと答えるだろうか。
武蔵浦和法律事務所代表の峯岸孝浩弁護士に話を聞いてみた。
まずは、そもそも赤信号で渡ること自体が、なんらかの罪に問われることがあるとするならば、それ自体が回答の一つになりえるだろう。
「歩行者でも、法律上は罪に問われる可能性はあります」(峯岸孝浩弁護士)
「自動車と同じように、歩行者も、信号機の表示する信号に従わなければなりません(道路交通法7条)。同法に違反して信号無視をすると、3ヵ月以下の懲役又は5万円以下の罰金に処せられます(道路交通法119条第1項第1号の2)」(峯岸孝浩弁護士)
しかし、峯岸孝浩弁護士はこのように付け加えた。
「もっとも、実際には歩行者が刑罰を受けるケースは少ないです」(峯岸孝浩弁護士)
信号無視をしても捕まらないとなると、回答としての説得力が弱くなってしまう。では改めて、どうして信号無視をしてはいけないのだろうか。
「もしも交通事故となった場合、それが損害賠償請求事件にまで発展すれば、信号無視を理由にご自身に過失があったと認められてしまう可能性があります。つまり、『被害者であれば賠償を受けられる額が減少』、『加害者は賠償する額が増額』という危険性が高まります」(峯岸孝浩弁護士)
「ご自身の身を守る為にも、道路交通法違反にならないよう注意するに越したことはありませんね」(峯岸孝浩弁護士)
なるほど。交通事故を起こした原因の一つに、信号無視が認められた場合、自分に不利になるということである。ちなみに日本国内での交通事故における、損害賠償高額ランキング1位はなんと5億843万円だそうだ(2013年12月9日付けの保険毎日新聞)。
確かに高額になればなるほど、過失があったかどうかは非常に重要な意味を持つ。
信号無視の話ではないが、6月から自転車の道路交通法が改正される。そこにはスマホをしながら運転する、いわゆる「ながら運転」も処罰の対象となっている。
信号無視同様に、軽い気持ちの交通違反が思わぬ重大事故となるケースを考えると、私達は交通ルールに対する認識を今まで以上に強めなければならない。何故なら、何かが起こった後ではもう遅いのだから。