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「入れ墨・タトゥー入浴お断り」って法律で禁止されてるの?それとも業界自主規制?

官民ともに力を入れて取り組む観光産業。しかしそのブレーキとなりえるのが、温泉などの施設で見かける「入れ墨・タトゥー 入浴お断り」だ。
事実、2013年にニュージーランドの女性が、北海道に訪れた際、入れ墨があったことを理由に、入浴を断られるということがあった。
こういった事態に対して観光庁は、全国の宿泊施設(およそ3700箇所)を対象に、入浴を断ったことによってトラブルがあったかどうか、またどのような理由で断っているのかなどをまとめたアンケート調査を行い、今後の対応を検討すると、本日発表した。
さて今回は、そもそも「入れ墨・タトゥー 入浴お断り」が法律で禁止されているのかどうかを尾﨑英司弁護士に伺った。

法律で禁止されているわけではなく、業界の自主規制だった!

そもそも「入れ墨・タトゥー 入浴お断り」というのは法律で禁止されているのだろうか。

「刺青がある人が銭湯や公衆浴場に立ち入ることを直接的に禁止する法律はありません」(尾﨑英司弁護士)

「銭湯や公衆浴場に関係ある代表的な業法としては公衆浴場法があります。公衆浴場法では、伝染病にかかっている方々の入浴拒否を義務づけていますが、刺青がある人の入浴拒否は義務づけていません。したがって、業界側の自主規制でしょう」(尾﨑英司弁護士)

風紀を乱す可能性があるなら拒否できるというが・・・

公衆浴場法以外で「入れ墨・タトゥー 入浴お断り」と関わりのある法律は旅館業法である。
その旅館業法第5条2号には、宿泊者が賭博や違法行為、または風紀を乱す行為をする恐れがある場合は宿泊を拒否してもよいと規定されている。この「風紀を乱す行為」とはどう解釈すればいいのだろうか。営業者の独断なのだろうか。

「『風紀を乱す行為をするおそれがある』場合が、賭博、違法行為に続いて規定されていることからすれば、違法行為には至らない程度の旅館の秩序を乱す行為をするおそれがある場合、を意味すると考えられます」(尾﨑英司弁護士)

「その判断は、第一次的には営業者の方に委ねられます。しかし、独断で解釈できるというものではありません。仮に、入館拒否された方が、本件入館拒否は違法だ、として争ってきた場合には、それが適法か否かは最終的に裁判所で判断されることになります。よって、営業者の方も、訴訟リスクを考慮した上で判断していく必要があります」(尾﨑英司弁護士)

様々な側面から議論が必要

口コミや評判、これはサービス業にとって非常に重要であることは言うまでもない。
もしも風紀を乱す恐れがある方を宿泊させ、それによって他の客に迷惑がかかってしまえば、その旅館の評判は一気に地に落ちるだろう。
かといって、あまりにもその基準を厳しくしすぎてしまえば、尾﨑英司弁護士が言うように訴訟リスクは増すばかりだ。
またそれ以前に、入れ墨やタトゥーをファッションや文化的側面から考え、入浴拒否は妥当ではない、あるいは差別だ、という意見もある。観光庁の今後の対応に注目だ。

取材協力弁護士  尾﨑英司 事務所HP
福岡県弁護士会所属。東京大学卒業後に三菱商事株式会社に入社。同社退社後、東京大学法科大学院を経て弁護士登録。弁護士として最も重要なことは、お客様の話にしっかりと耳を傾けることです。当たり前のことのように思えるかもしれませんが、重い気持ちを抱えて弁護士に相談しようと決心された方に対し、弁護士として常に意識すべき姿だと考えています。

ライター 井上