HOME > 法律コラム > 10万未満の会社備品なら経費で落とせるけど、2万の椅子と9万の机で合計11万だったら?
パソコンなどを購入する際、経理担当者が10万円まで、という基準をやかましく指導することがあります。これは、10万円までの資産であれば、原則として固定資産とならず、消耗品として一度に経費として処理することが税務上可能になるからです。
固定資産として計上するのであれば、毎年減価償却するなど面倒な経理処理が発生しますが、消耗品となればそういう手間がかからず、都合がいいわけで、税理士としても、節税手段として、10万円未満の資産を買うことを提案しています。
10万円までなら一度に経費にできる、という基準があるところ、問題になるのは10万円未満を判断する基準です。例えば、椅子が2万円、テーブルが9万円の応接セットを買った場合、個別に見ればそれぞれ10万円未満ですが、応接セットとしてトータルで見れば11万円となり、消耗品とすることができない、と判断されます。
この点、基準としては、一般的に取引される単位を基に判定するのが原則であり、取引単位で見ただけでは本来の機能を果たせないと認められる場合には、セットで判断するとされています。
先の応接セットについては、椅子やテーブルだけで取引されることは多くはありませんし、椅子とテーブルでそろって初めて機能を果たすことができますから、応接セットというワンセットで判断することになっています。
同様に、プリンタとパソコンについて、実務では問題になります。
税務署時代、「プリンタはパソコンに接続して初めて機能を果たすため、両者はワンセットで10万円未満かどうかを判断する」という指導を受けており、この指導に基づいて、税金を課税したこともあります。
しかしながら、プリンタもパソコンも個別に取引されることが通例であり、机と椅子の色合いも重要になる応接セットとは異なり、パソコンを買い換えてもプリンタを変えない、ということは多いわけですから、このような取扱いには疑問も残ります。
このあたり、基準があいまいで困るところですが、次回述べる重要性の原則という考え方からすると、パソコンがあって初めてプリンタを使える、という機能面に着目するのではなく、取引される単位に着目すべきと考えられるわけで、税務署時代の指導事項には大いに疑問があります。
いずれにしても、基準はあいまいですから、税務調査で問題になれば、どこまでも交渉しなければならないポイントの一つです。