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右手に矯正させようとしたら涙をボロボロ流して嫌がる子供。これって実は虐待?!

利き手が左手であることは、様々なハンデがあるとされている。
●自動改札機やドアノブ、ハサミなど、世の中の商品の多くが右利き用につくられている。
●飲食店で右利きの人が隣に座れば、手がぶつかる。
●平仮名、漢字、アルファベットの書き順は左から右に書くようになっており、左利きの人には書きづらい。
●文字を書いていくと手が汚れる。
●自転車の降車側にスタンドがない。
このようなハンデを心配する親が、「この子のためだから」という理由で、嫌がる子供に対して右手に矯正させようとするのである。左手を使おうとしたら子供の手を叩いたり、左手をビニール袋で縛り使えないようにしたり、その方法は様々である。
さて今回は、利き手の矯正を子供が嫌がった場合、虐待になりえるかどうかを中島宏樹弁護士に伺ってみた。

あらゆる暴力は虐待!

嫌がる子供に対して、利き手の矯正が虐待に当たるかどうかの前に、そもそも虐待の定義について知る必要があるだろう。

「児童虐待とは、親またはその他の養育者の作為または不作為によって、児童に実際に危害が加えられたり、危害の危険にさらされたり、危害の脅威にさらされることを指し、具体的には、身体的虐待、性的虐待、ネグレクト、心理的虐待などがあげられます」(中島宏樹弁護士)

「刑法上は、児童に暴力を振るった場合には、暴行罪・傷害罪、性的ないたずらを行った場合には、強制わいせつ罪、育児放棄した場合には、保護責任者遺棄罪、などに該当することになります。また、民法上は、従来の親権喪失制度に加え、平成23年改正により親権停止制度が新設されています」(中島宏樹弁護士)

身体的暴力を加える、心理的暴力を加える、性的暴力を加える、などが代表例だろう。その他に金銭的虐待や養育放棄や無視なども虐待とされている。

嫌がってるのに、無理矢理、体罰を加えながら矯正させたら虐待

では本題である利き手の矯正が虐待に当たるかどうかはどうだろうか。

「虐待に当たるかどうかは、子どもの状況、保護者の状況、生活環境等から総合的に判断することとなりますが、その際には、子どもの側に立って判断するよう留意されるべきです」(中島宏樹弁護士)

「本人がとても嫌がっているにもかかわらず、体罰を加えるなど無理やり矯正を行った場合には、虐待に当たりうると思います」(中島宏樹弁護士)

虐待かどうかは、その状況に応じて変わるという前提は欠かせないが、(1)子供が嫌がっている、(2)暴力を加えて矯正させる、という状況を満たせば虐待になりえると中島宏樹弁護士は話す。

習字教室での矯正も、条件を満たせば虐待になり得る!

左利きの子を持つ親は、上手に字がかけるようにと願って、習字を習わせることが多いという。そして、一部の習字教室では左手ではなく右手で書けるように指導することがあるようだ。親からの矯正ではなく、このような習字教室の先生からの矯正であっても、先ほどの条件を満たせば、虐待となりえるのだろうか。

「習い事先の指導者の場合も、親の依頼であれば、親が行ったものと同様、虐待に当たりうると思います」(中島宏樹弁護士)

逆効果になりえる矯正

「利き手矯正の経験がどんな影響を及ぼしたか」という興味深いレポートをカナダ人研究者が発表しており、下記のように対象を分けて、矯正後の生活の満足度について聞き取り調査を行っている。
(1)左から右に矯正されて、現在は右手で字を書いている
(2)左から右に矯正されたが、上手くいかず現在は左手で書いている
(3)矯正された経験がない左利き
(4)元々右利き

結果は、(2)が最も低い満足度となった。
これには理由がある。実は利き手と脳は非常に深い関係が有り、矯正による心理的負担が脳の発達に悪影響を及ぼしたのではないかと言われているのである。
良かれと思った矯正が、実は逆効果になった、なんてことがないように気を付けていただきたい。

執筆  中島宏樹 事務所HP
京都弁護士会所属。京都大学法学部を卒業後、2005年に旧司法試験に合格。その後、法テラス広島法律事務所の初代所長にも就任。現在は弁護士法人京阪藤和法律事務所 京都事務所に所属。相談者に寄り添うことを信条に、冷静と情熱の絶妙なバランスを心掛け、理想の解決に迅速対応します。

ライター 大田タケル Twitter Blog