HOME > 法律コラム > 東大卒・元国税の税法研究者が辿り着いた、国のトンデモ税制改正から身を守る方法とは?
税法には予見可能性が必要といわれます。
これは、納税者があらかじめ税法の内容を理解できるように、あらかじめその内容を法律に定めなければならない、ということを意味しています。例えば、税金がかからないとされていた取引を行った後になって、後だしジャンケン的に法律を変えて、税金がかかるとされれば、納税者としてはたまったものではありません。
こうならないよう、税法を改正する場合には、遡って法律を適用することは原則として禁止されており、改正が国会を通過してから適用されるように措置されるのが通例です。
しかしながら、過去には、この原則から見て問題が大きいと考えられる法律があり、最高裁で問題になった事例があります。
平成16年度の税制改正で、個人の不動産の売却損は、給与所得などと相殺することができないこととされましたが、この改正は平成16年1月から適用されています。平成16年度の税制改正は、平成16年4月に公布されていますので、遡って税制改正が適用されることになります。
これが不合理極まりない、という話で最高裁まで争われたのですが、結果としては前年末(平成15年12月)に、税制改正大綱が公表されるところ、内容は事前に分かるため、後だしジャンケンではない、と最高裁は判断しています。
税制改正大綱は、自民党が「来年度の改正はこうする」と説明した資料であり、これを基に法律が作られるわけですが、法律ではありません。事実、税制改正大綱に書かれていても、国会を通過しなければ法律は成立しませんから、厳密には改正内容を推測できるものの、予測できるものではありません。
加えて、税制改正に関心を持つとは言っても、国民の大部分は税の専門家ではありませんので、税制改正大綱をくまなくチェックする納税者はほとんどいません。
このため、税制改正大綱を見れば分かる、といわれても、全く同意できないのが正直なところです。
とりわけ、近年は醜い政争(平成25年度税制改正)や、ご都合主義の衆議院の解散(平成27年度税制改正)により、政治家の都合で税制改正大綱が公表される時期が非常に遅くなることが通例です。このため、検討したくとも時間はない、といったありえない事態も今後は増える可能性があります。
日本の税から身を守るには、国外転出しかなさそうです。