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税務調査の実施率を上げたいのに上げられない、税務署の見事な本末転倒ぶりとは?

国税組織が非常に神経質になっている数値の一つに、実調率があります。実調率とは、税務調査の対象となる法人や個人事業主等に対して、実際の税務調査が行われた割合をいいます。実調率が高ければ、税務調査が多く行われる証拠になりますから、納税者の不正取引をけん制するためにも、国税はこの数値に非常に神経質になっています。

近年、この数値が大きく下がっており、問題になっています。

単純計算で、33年に一度しか税務調査は行われない

先般公表された法人の実調率は、3%程度であり、私の現職時代の割合(5%程度)よりも、相当低下していることがうかがえます。3%と言えば、33年に一度しか税務調査が行われない、ということを意味しますから、脱税をけん制するための税務調査が機能していないことになります。

この原因として、国税が主張しているのは、(1)平成25年からスタートした税務調査手続き法制化の影響で仕事が増えたこと、(2)申告する納税者の数が増えたこと、(3)定員削減方針を受けて、職員が減っていること、の三つです。

仕事が増えたにも関わらず、人は増えていないわけで、実調率の低下は当然、というような考えが見えてきます。こういう事情もありますから、納税者はもっと税務調査に協力すべき、といった風潮も見られるところです。

人手不足は理由とならない?

ところで、税務署の職員は、メールを送ることはできないとされています。誤送信があると困るから、というのがその理由ですが、メールを送受信することで納税者や税理士との調整や交渉ははるかに楽になり、仕事がスムーズに終わることは間違いありません。

更に、税務署によっては、FAXの送受信さえも禁止しているところもあります。このため、根拠となる資料を早急に送りたくとも、わざわざコピーして、かつ数日かけて郵送し、それから内容を確認して初めて電話で交渉する、となり、税務署にとっても、全く利益のないやりとりを行う必要があるケースも多くあります。

法律が変わって仕事が増えた、人員が増えない、などと言い訳が多く聞かれるところですが、FAXにしてもメールにしても現代のビジネスにおいては常識的なツールです。このようなツールを活用できないからこそ、実調率の低下に歯止めがかからず、結果として不正取引に対する税務署のチェックが働かないとなると、本末転倒の話でしょう。

執筆  松嶋洋 WEBサイト
平成14年東京大学を卒業後、国民生活金融公庫を経て東京国税局に入局。国税調査官として、法人税調査・審理事務を担当。国税局を退官後、経団連関連の税制研究所において、法人税制を中心とするあるべき税制の立案と解釈研究に従事。現在は、税務調査対策及び高度税務に関するコンサルティング業務に従事するとともに、税理士向けに税務調査・法令解釈のノウハウにつき講演執筆活動を行う。

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