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違法駐車が邪魔で救急車がルート変更!人命に影響出たら持ち主は罪に問われる?

「救命救急は時間との戦い」とはよく聞く言葉であるが、それを具体的に示すのがカーラーの救命曲線である。これは心停止から3分、呼吸停止から10分、大量出血なら30分、それぞれの状態で時間が経過し、何も処置がされないと約半数の方が亡くなるというデータをグラフ化したものである。
またドリンカーの救命曲線は、心肺停止状態になってから、蘇生する可能性が時間の経過とともにどれほど下がっていくかをまとめたグラフである。そこでは3分が経過すると、急激に蘇生率が下がると示されている。

現場に早く到着すること、迅速に病院に搬送すること。この二つが重要であることは言うまでもないが、もしも違法駐車が邪魔で、救急車がルート変更をして、人命に影響が出た場合、その違法駐車の使用者は何かの罪に問われるのだろうか。この問題について高橋和央弁護士に伺ってみた。

過失も故意もない、だから罪には問われない!

「犯罪は、原則として故意か過失がなければ成立しません。違法駐車の場合、駐車することの認識はあっても、この場所に『救急車が来て駐車車両のため通行できず、ルート変更をして人命救助に影響がでる』ということまで予想できることは少ないと思います」(高橋和央弁護士)

「また、仮に、ルート変更して急患が死亡したとしても、ルート変更がなければ死ななかったことが立証できなければ、死亡という結果についてまで責任を問うことができません。従って、この場合、駐車違反を超えて別の犯罪として捜査されるという可能性は低いと思います」

結論としては、罪に問われないとのこと。本人には駐車違反自体の認識はあっても、それが救急車の邪魔になるかもしれないなんてことを予測できるはずがないため、過失が認められないということだろう。

違法駐車している車に自転車が追突し亡くなったら、業務上過失致死の可能性も有り得る!

「もっとも、違法駐車が交通の妨げとなり交通事故の原因となることは容易に予想できることです」(高橋和央弁護士)

「もしも、違法駐車車両に追突して死亡者がでた場合などは、違法駐車した人に業務上過失致死等の犯罪が成立する可能性があります」(高橋和央弁護士)

先程は、救急車の邪魔になることは予測できないと話して頂いたが、交通事故の原因になることは予想できるため、違法駐車が原因で事故を起こした場合、過失があったとみなされるかもしれないということである。

「過去にも駐車中の車両に自転車が追突し自転車の運転していた人が死亡した事案で、違法駐車した運転手が業務上過失致死罪で送検された事案がありました。違法駐車厳罰化の流れに従い、今後、このようなケースが増えてくるのではないかと思います」(高橋和央弁護士)

運転中による事故ではないことを繰り返し述べておく。これは駐車中の車と自転車が追突したケースである。つまり運転手はいなかった、もしくはいたとしても運転せずに車の中にいただけである。

最後に…

今年の1月から警視庁は違法駐車に対する、取締りガイドラインを新しく発表した。
そこでは取り締まりを強化するエリアと時間帯が明記されている。つまりその時間帯と、そのエリアは交通量が多く、違法駐車が迷惑になったり、交通事故の原因になる可能性があるということだろう。
高橋和央弁護士が最後に述べてくれたように、違法駐車は、駐車違反だけでなく、もしもそれによって交通事故となった場合、他の罪に問われる可能性もあることを決して忘れてはならないだろう。

取材協力弁護士  高橋和央 事務所HP
札幌弁護士会所属。諏訪・高橋法律事務所所属。大学を卒業後、民間企業に就職。また自営業などの経験もあり。様々な仕事を経験してきたことが、相談者の気持ちを理解する上で、非常に役立っています。経営アドバイザーネットワーク協会のアドバイザーや日弁連交通事故相談センター示談あっ旋担当などにも所属し、日々依頼者の問題解決に奮闘中。

ライター 大田タケル Twitter Blog (photo by Emran Kassim