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脱税でなくても重加算税のペナルティがかかる!じゃあ請求書の日付を改ざんした場合は?

脱税などの不正行為を行った場合、原則35%もの重加算税がペナルティーとして課されることはよく知られていますが、重加算税がかかる要件について検討すると、このような理解は必ずしも正確ではないことが分かります。

重加算税は脱税に対してかかるのではなく、「事実の隠ぺい又は仮装」に対してかかる、とされています。このため、脱税意図はなく、予算消化という観点から工事の完成を前倒しにした、といった場合、脱税とは言いがたいですが「事実の仮装」には当たることになりますので、原則として重加算税が課税されます。

よく、悪いことをしていないのに重加算税がかかると指導された、という相談を受けますが、「事実の隠ぺい又は仮装」があれば重加算税がかかりますので、この点慎重に判断する必要があります。

事実とは、税金の計算に関係ある事実

ところで、「事実の隠ぺい又は仮装」というと、あらゆる隠ぺいや仮装が重加算税の対象になる、と思われるかもしれません。しかしながら、重加算税は税金の計算上の誤りに対して課税されますから、「税金の計算に関係ある事実」を隠ぺいしたり仮装したりする場合に、かかるものなのです。

具体的な例としては、工事代金の請求書の日付があります。本来、決算日後に払う代金について、決算日に支払ったことにするため、請求書の日付を前倒しにする、という行為があります。この場合、請求書の日付を改ざんしていることから重加算税がかかる、と思われがちです。しかし、工事代金は、工事の終了日以後に経費になりますので、税金の計算上問題になるのは、代金の支払日ではなく、工事の終了日です。

このため、正確には工事の完了報告書などにおいて、工事の終了日を改ざんした場合に重加算税がかかるのであり、代金の支払日付を改ざんした、というだけでは税金の計算上問題になりませんから、解釈の余地はあるものの、重加算税は原則としてはかからない、という結論になります。

国税は基本理解していない

このような建前があるにせよ、税務調査を行う調査官は、何かしらの改ざんがあれば「事実の隠ぺい又は仮装」がある、として重加算税をかけようとします。

その改ざんが本当に税金の計算に関係ある事実の隠ぺい又は仮装に当たるか、その理由についてきちんと説明を受けなければなりません。

執筆  松嶋洋 WEBサイト
平成14年東京大学を卒業後、国民生活金融公庫を経て東京国税局に入局。国税調査官として、法人税調査・審理事務を担当。国税局を退官後、経団連関連の税制研究所において、法人税制を中心とするあるべき税制の立案と解釈研究に従事。現在は、税務調査対策及び高度税務に関するコンサルティング業務に従事するとともに、税理士向けに税務調査・法令解釈のノウハウにつき講演執筆活動を行う。

photo by Ken Teegardin

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