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小学生でも100%わかる「資生堂の移転価格 38億円申告漏れ」を解説!

よくメディアで取り上げられる有名会社の課税問題。

国税に入られれば、悪いことなどしていなくても、何かしら税金の問題が発生するのが、この日本の難しいところです。

つい先日も、資生堂で課税問題が有りました。

「資生堂が38億円申告漏れ 移転価格巡り東京国税局指摘」

「資生堂が38億円申告漏れ 移転価格巡り東京国税局指摘」(2014年6月20日 日本経済新聞の記事引用)

資生堂が国内と米国子会社の取引を巡り東京国税局の税務調査を受け、移転価格税制に基づき2012年3月期までの5年間に約38億円の申告漏れを指摘されていたことが、20日分かった。過少申告加算税などを含めた追徴税額は約17億円で、既に納付した。同社は「見解に隔たりがある」と異議を申し立てる方針で、日本と米国の二重課税を避けるための相互協議も申請する。

同社によると、17日に更正処分通知を受けた。指摘があったのは、米国子会社から化粧品を輸入し、主にアジア向けに販売していた取引。輸入価格が通常より高く、国内で課税されるべき所得を海外子会社に移して、日本での納税額が過少になっていると判断されたもようだ。

「移転価格税制」をわかりやすく説明!

A社は日本にある化粧品を販売する会社です。ただ、日本で化粧品を作るのはコストが高くなるため、海外に子会社Bを作り、そこで製造したものを日本に輸入していたとします。

この化粧品を海外で製造するコストを@100円/個とします。日本での販売価格は@500円なのですが、海外の子会社も利益をださないと会社を運営できないですから、日本への取引金額を@200円に設定したとします。そうすると、それぞれの利益は下記になります。

海外のB社:売上@200円-製造コスト@100円=利益@100円

日本のA社:売上@500円-仕入@200円=利益@300円

しかし・・・です。B社は海外にあるとはいえ、A社の子会社です。B社が販売し、A社が仕入れる金額は自分たちで自由に設定できるわけです。

「ちょっと待ってよ!?日本の税金が高いから、日本でこれ以上儲かると、税金が増えるだけだな。海外の方が税金は安いから、海外で儲かるようにしちゃえ!」と考えたらどうなるでしょうか。先ほどの、A社とB社の取引金額を@400円にしてみたら・・・

海外のB社:売上@400円-製造コスト@100円=利益@300円

日本のA社:売上@500円-仕入@400円=利益@100円

なんと、金額設定を変えるだけで、利益の金額が日本から海外に移転できるのです。

非常に複雑な「移転価格税制」

こんな自由なことをされてしまっては、日本の税収は減る一方だ・・・これを防ぐためにあるのが「移転価格税制」というわけです。 つまり、日本以外の海外で儲かるように仕向け、日本での税金を逃れようとするのを防止する税制なのです。

移転価格税制の問題は、税理士などの専門家からしても相当に難しい問題で、「じゃあ国税は、いくらで取引すれば許してくれるんだよ!?」という、非常に曖昧な側面を持ち合わせています。

また、資生堂の例でいうと、日本で課税されてしまうと、アメリカで税金を払いすぎていることになっているはずなのですが、アメリカ側としても「日本の都合だけで税金を返せないよ」となることもあるわけです。

グローバル化が進むことは、国際間取引が拡大することで、各国の税制や税率が違う以上、簡単には解決できない問題もたくさんあるのです。資生堂、大変だろうな・・・

執筆  久保憂希也
1977年 和歌山県和歌山市生まれ
1992年 智弁学園和歌山高校入学
1995年 慶應義塾大学経済学部入学
2001年 国税庁入庁 東京国税局配属
東京国税局管内の税務署で税務調査を担当。
2008年 ㈱InspireConsultingを設立。税務調査のコンサルタントとして活動。
人気のセミナー講師として年間50回以上、セミナーの壇上に立つ。
著書には、「~元国税調査官が斬る~税務調査の真実」「元国税調査官が解説
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