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「感染症の疑いあり」ーー陰性だった場合の治療費や休業補償ってどうなってるの?

本日、国立感染症研究所は、抗生物質の多くが効かない「カルバペネム耐性腸内細菌科細菌」に感染した患者が、去年の9月以降、日本国内で1400人近くにのぼっていると報告した。
「カルバペネム耐性腸内細菌科細菌」は欧米の医療機関などで問題となっており、感染すると抗生物質の殆どが効かないため、治療が難しく、死亡することもありえる。

日本への感染ルートは、主に海外の医療機関を受診した方による持ち込みであることがわかっており、国立感染症研究所の柴山恵吾部長は「この多剤耐性菌は、欧米ではこの10年で急速に増えたとされるが、国内でも一定の規模で広がっている実態が初めて分かった。免疫力の低い高齢者は重症化するリスクも高いので、病院内での感染を早期に発見し対策を取れるようにする必要がある」と話した。

もしも海外で感染症に罹患したり、疑いが出てしまった場合は法律により直ちに病院に搬送され、健康診断とそれに伴う適切な処置を受けなければならない。しかし、もしも診断結果が陰性だった場合の医療費や仕事の休業補償はどうなるのだろうか。この問題について濱悠吾弁護士に寄稿していただいた。

医療費は都道府県が負担!

「一類感染症」、「二類感染症」及び「新型インフルエンザ」等は、感染の断定はできないが、症状がよく似ている「疑似症患者」も、感染症予防法上、患者として扱われます。
そのため入院措置後、実際には感染していなかったことが発覚するというケースも考えられます。

感染症予防法に基づいて行われた健康診断費用及び入院による治療費は都道府県が負担します。そのため陽性・陰性に関わらず、患者自身が治療費等を負担することはありません。

休業補償はないが、傷病手当や労災などで補うことになる

休業補償については、感染症予防法上の定めは特にありません。

そのため、休業補償を都道府県に請求することは難しいでしょう。しかし、都道府県知事の判断に過失があったような例外的なケースでは、休業分の損失を、国家賠償請求訴訟により請求することも考えられます。

ただ、陰性であったとしても、なんらかの病気による休業に当たる場合には、所属する健康保険から、傷病手当金(報酬の約3分の2の価格)の給付を受けることは可能です。

また業務に起因して罹患した病気の場合には、労災保険から、報酬の約80%の額を、休業補償として受け取ることができます。

取材協力弁護士  濱 悠吾 優和綜合法律事務所
東京弁護士会所属。早稲田大学法学部卒業。中央大学大学院法務研究科修了。某動画共有サイトを運営する企業の法務部でインターネット上の権利侵害対応業務、知的財産業務を担当。