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税務訴訟でも大きな問題となっている「寄付金課税の誤解」をプロが解説!

寄附金課税に対する税務調査対策の考え方として、(1)時価の立証や説明を税務署に求めること、(2)実質的に贈与したとみられるかどうか交渉すること、の二つのポイントがあると前回解説しました。法律を読むと、この二点は常識なのですが、国税職員の中には、このあたりあまり理解していない方も多くいらっしゃいます。

とりわけ、(1)の時価については、安易な金額を時価として、課税処分を受けた事例もあり、裁判所で大きな問題にもなっています。

何か明確な数字を時価とする傾向

グループ会社と取引する場合、事業年度の中途では予定価格で取引をし、決算段階で市場の時価に修正する、という実務がかなり行われています。逐一時価を確認すると大変ですから、予定価格を使って取引をし、後日修正することで何ら問題がないと思われますが、この予定価格を時価として課税することが、国税は非常に多いのです。

時価を検証すると面倒くさい話ですから、予定価格のような明確な数字があれば、それが時価、といった安易な課税を行うわけです。あるOB税理士の記事を読みますと、取引には「真の合意価格」なるものがあり、その合意価格と異なる金額で取引を行うと寄付金課税される、としています。

合意した価格で取引しても、時価に満たない金額で取引すると寄附金課税されるわけですから、「真の合意価格」と異なる金額で取引したからといって、それだけで寄附金課税されることはありません。

一般的に、時価は第三者間で取引をされる金額を言いますので、市場価格を意味します。このため、市場価格がいくらかが問題になります。

不明瞭なものへの課税は難しい

寄附金に限った話ではありませんが、経費とならない過大な役員退職金など、金額が問題になるケースは決め手がありません。このような決め手がないものに対して課税する場合、証拠の提示が難しいため国税としてはおいそれと課税することは原則としてはできないことになっています。

基本的に、税務調査は修正申告を提出して終了しますので、納税者が納得しなければ終わりませんから、金額の問題はゴネればかなり逃げられる、とOB税理士はもちろん、現職の調査官も言っています。

半面、予定価格のような何らかの明確な金額があれば、それを根拠とすることができますので、その金額を適正な時価として課税することが非常に多いです。このため、できることなら作成する契約書などには具体的な金額は明記しないほうがいいでしょう。

執筆  松嶋洋 WEBサイト
平成14年東京大学を卒業後、国民生活金融公庫を経て東京国税局に入局。国税調査官として、法人税調査・審理事務を担当。国税局を退官後、経団連関連の税制研究所において、法人税制を中心とするあるべき税制の立案と解釈研究に従事。現在は、税務調査対策及び高度税務に関するコンサルティング業務に従事するとともに、税理士向けに税務調査・法令解釈のノウハウにつき講演執筆活動を行う。

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