HOME > 法律コラム > 元税務調査官が語る「税務調査、恐れるに足らず!」 この理由とは?!
先日、「税務署来たら8割「白旗」」という記事が掲載されていました。
この記事によると、国税庁の資料上、所得税や相続税なら8割、法人税では7割、税務調査のミス(非違)が発見されているようです。
この数値は異常に高いと思われるでしょうが、調査官の立場からすれば、平均的という印象があります。事実、私の在職中も、おおむねこの割合で推移していました。
8割もミスが発見される、と聞くと、不正な申告を行う納税者をピックアップしたり、祖誤りを適宜発見したりする国税の調査能力の高さを想定されると思います。事実、先の記事においても、国税のシステム(KSKシステム)の優秀性などが非常にアピールされていました。
しかし、この数値を過大評価する必要はないというのが正直なところです。テストで100点満点取ることが難しいように、100%間違いない申告書を作ることは難しいため、どこかで単純なミスが生じてしまうことも実務ではよくありますし、何より日本の税務申告は申告期限が短いですから、そもそもミスを誘発しやすい状況となっています。
加えて、このミス発見割合は、税金が増える間違いだけではなく、税金が減る間違いもカウントされることになっていますので、税務署にとって有利な間違いだけを集計したものではありません。
なお、優秀とされるKSKですが、正直なところ税務調査ではそれほど効果はありません。事実、不正取引は、KSKがきっかけとなることはほとんどなく、調査官の地道な努力で見つけるのがほとんどです。
こういうわけで、8割もミスがあるから税務署が怖い、と思う必要はありません。税金の計算上は何らかのミスが生じてしまうことは仕方ないと割り切って、致命的なミスをしないという精神を持っておけば大丈夫です。
致命的なミス、というのは脱税などの不正取引です。不正取引を行えば救いようがありませんから、その一線は絶対に超えてはいけません。
このあたり、現職の調査官を甘く見ているOB税理士の中には安易に考える方もいますので、注意が必要です。