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認知症の母の後見人になって不動産売却をしようとしたときのトラブル

Q&AサイトのOKWAVEで「後見人をたてた不動産売買契約について教えてください」というタイトルで質問が投稿された。

質問者は、認知症となった母親の介護費用を捻出するために、母名義の不動産を売却することを決意。
相談した仲介業者からは、売却にはまず質問者が母親の後見人になる必要があると言われたため早速手続きを開始。
正式に認められるのが今年9月となったが、その前に購入希望者が見つかった。
あとは質問者が後見人として正式に認められれば契約が成立するはずだったのが、ここでトラブルが起こった。

今回はこの問題について弁護士法人湘南よこすか法律事務所逗子事務所の畑中優宏弁護士に伺った。

質問 後見人をたてた不動産売買契約について教えてください

82歳になる認知症の母の所有する土地を売却しようということになりました。母の介護費用などにあてるためです。
査定してもらった不動産仲介業者に、この場合後見人をたてないと売買できないと言われ、家族で相談の上、長女である私を後見人として申し立てようということになりました。その土地の近くに住んでいて取引に立ち会いやすいからです。
この春に土地を買いたいという人が現れ、不動産仲介業者に勧められて、こちららは後見人申し立ての手続きが必要で、その期間は待つことを買主も了承の上で、今年9月末の引渡しという条件で契約することになりました。
まだ後見人になっていないのに、後見人として契約するのは順番が違うように思いましたが、仲介業者から、もし手続きが遅れたら、そのときは期限を改めるし、選任されなかった場合には契約は無効になるからと言われ、買主とともに仲介業者のオフィスで契約書類を取り交わし、手付金100万円を受け取りました。

同時に仲介業者から司法書士を紹介され、後見人申し立ての手続きを依頼しましたが、なぜかその司法書士は引き受けたのにまったく動いてくれず、母は県外在住なので遠いから自分でやるよう言ったかと思うと、現地の司法書士を紹介するからそちらでやってもらってくれといったりで手続きを進めてくれないのです。
不動産仲介業者にも立ち会ってもらい、話を決めたのに、何度問い合わせても早急にやって連絡するといいながら、待てど暮らせど連絡が来たためしがありません。
そうこうするうちに9月になってしまい、このままでは、買主に引き渡すのが遅くなるから別の形で契約し直して取引することを仲介業者から進められ、一応受けることにしましたが、新たに送られてきた契約書類は引渡し期限、金額他で納得いかない部分があり、この契約書類にはサインできないと返事しました。
紹介された司法書士は言うたびに話がころころ変わり、それに振り回されて疲れたし、その間仲介業者もそちらからせかしてくださいねと言うだけでまったく間に立ってサポートしてくれなかったし、買主には早く引き渡すよう言われてこじれるしで、この話は白紙にしたい、手付金もお返しすると言いました。
すると、たとえ後見人になっていなくても、後見人になることを前提として売買契約をしているから、やめるなら、契約書にあるように手付金を倍返しにしなければダメだと仲介業者に何度も言われました。

この場合、後見人になっていなくても、それを前提とした契約書類の文言は有効ですか?この契約は成立しているのでしょうか?専門家の方に教えていただきたいです。よろしくお願いします。

回答 契約は成立していない、無効である。

法律的には、契約は成立していません。あなたにお母様の土地を売買する法律的な権限がまだないからです。
ですから、そもそも契約がないのですから、受け取った100万円を返還して、終わりにすることも可能かと思います。
ただ、何の権限もなく、お母様とはいえ他人の財産を処分する契約をしたあなたの責任も生じる可能性があります。
詳しくは、この点について契約書にどのように記載されているかにもよるので、ここでは明確に回答できません。
申立をしてもあなたが後見人に選任されるかどうかもわからないわけですし、やはり、後見人に就任してから契約をすべきでした。
お近くの弁護士に、契約書を見てもらいながら、相談をすることをお勧めします。

※OKWAVE Professionalより許可を得て、質問と回答を配信しております。

回答弁護士  畑中優宏 詳細プロフィール
横浜弁護士会所属。主に刑事事件(裁判員裁判も多数経験)、離婚、相続、債務整理、交通事故、不動産、労働事件、行政事件、損害賠償請求等一般民事事件などの実績多数。