HOME > 法律コラム > 富裕層と国税のいたちごっこ 部外秘の税務調査マニュアルダダ漏れが原因?!
税務署には、業種別ないし初任者向けの、税務調査のマニュアルが多数あります。円滑な税務調査を実施するために作成しているものですので、このようなマニュアルが流出すると、それを悪用する納税者が当然に出てくると考えられます。このため、このようなマニュアルは原則として部外秘とされていますし、情報開示を請求しても、マスキングされてよくわからないことが通例です。
私自身、退官してから驚いたのですが、このようなマニュアルを税務署のOBが持ち出していることが非常に多いのです。
国税組織にいた身から申しますと、税務調査のマニュアルなどについて、国税の情報管理はそれほど厳重ではありません。マニュアルを支給した者の押印を求めるといったことはありませんでしたし、だれがどのマニュアルを持っているかも管理できていませんでした。
このため、税務署を退官する際も、資料の管理は十分ではなく、退官する職員の上司も入念なチェックをかけませんので、結果としてマニュアルの持ち出しがかなりあるという印象があります。
ところで、税理士会が運営しているTAINSというソフトがあります。ここでは、国税から入手した情報公開資料が掲載されていますが、その内容を見ると、OB税理士が税法の解説として出版している本と酷似しているものが多数あります。
おそらく、OB税理士が持ち出した内容を書籍化しているからこうなるのでしょう。このような書籍を宣伝に使う、というのはいかがなものかと個人的には考えています。
マニュアルと酷似していますので、誰にでもわかる話と思いますが、このあたり国税組織が問題視しない理由がよく分かりません。以前、日経新聞に、国税が狙う大口資産家の基準が掲載されました。
「富裕層2万人」 課税強化で10の選定基準(真相深層)
その記事によると、情報公開したマニュアルでは「正確な事実の把握を困難にする恐れがある」との理由からマスキングがされていた基準が、複数の国税OBらに取材した結果、かなり鮮明に分かったようです。
国税が気づかぬうち(気づいているとは思いますが)「正確な事実の把握を困難にする恐れ」が現実化しないことを祈るばかりです。