HOME > 法律コラム > 減価償却の必要がある貸借物件への内装費。貸借期間で償却する為の要件は?
テナントを借りて内装工事を行うことも多いと思いますが、この内装工事については、一時の経費にはならず、減価償却を行う必要があります。このような内装工事、すなわち造作については、それが建物に対して行われた場合、造作自体の種類、用途、使用材質などをもとに、償却できる年数を合理的に見積もることが原則ですが、実際に計算すると10年超に及ぶことが通例です。
しかしながら、借りている建物に対してした造作ですから、賃貸借契約を解除すれば、その造作は取り壊して返す必要があります。10年も同じテナントを借りることは多くはないと思われますので、所定の要件を満たす場合には、賃貸借契約の契約期間で償却することができるとされています。
賃借期間で償却する要件は、以下の3つです。
(1)賃借期間の定めがあること
(2)賃借期間の更新ができないこと
(3)有益費の請求や買取請求ができないこと
賃借期間が決定しているのであれば、それ以上は造作を使うことができませんから、その期間で減価償却することが認められています。
ただし、更新が不可のものに限定されていますので、契約書によくある「どちらか一方から解約の申出がない場合には自動更新する」といった文言があると、この適用をうけることはできません。安易に賃借期間で償却することのないよう、契約書をきちんと確認する必要があります。
税理士はこの辺り非常に慎重な対応をしていますが、税務調査で問題になることは多くはありません。減価償却のミスというのは、単に経費にすることができるタイミングの話であり、長期的に見れば経費になる金額は変わらないからです。加えて、減価償却の税務調査は、工事の内容を具体的に確認する必要があるなど、なかなか大変な手間がかかります。このため、金額が非常に大きいような場合を除いて、税務調査ではスルーされることも多いという印象があります。
実際のところ、先の賃借期間で償却する特例についても、全く知らない税務職員も多いと思われます。
もちろん、このことに甘えてはいけませんし、不正はもっての他ですが、万一ミスが発覚された場合には、調査官に柔軟な対応を求める必要もあります。